「37話派生話」
「え?キサカさん‥今なんて?」
キラは目の前にいるキサカに尋ねた。
マルキオ島のドックに着いたAAはジブラルタルに行っていたキサカらとの再会を果たした。
「えぇですから、今船にアスランが乗っているんです。海でMSに討たれたところを我々が拾ったんですが…。」
「でも、アスランはミネルバに‥。」
「どうやら逃げて来たようで‥。」
何をやってるんだ君は‥。
目を閉じて深い溜息をつきそうになるのをなんとか堪える。
キサカはそんなキラをみて分かりますと言わんばかりに肩を落とした。
「あ〜!」
暫く沈黙が時間を支配したがキラは何か思い出したように声をあげる。
「キラ様?」
キサカは突然の声に驚いた。
「どうしようキサカさん!!」
キラはキサカの方を向くと叫んだ。
異常に慌てていたためか、声の大きさが制御できていない。
「何かあったのですか?」
「あったって言うか、今から起こるというか‥。」
「起こる?」
何が起こるのかわからないためキサカは首をかしげると鸚鵡返しに聞いた。
「ええ、実は‥」
口に手をあて少しキラは青ざめている。
それほど恐ろしいことがあるのだろうか、キサカは首を傾げたまま次の言葉を待った。
「実は‥カガリがそっちに行ったんです‥。」
キラは最終宣告のように告げた。
カガリは戦況を聞こうとキサカの艦まで来ていた。
しかしなかなかお目当ての人物は見当たらない。
「おい、キサカはいないのか!?」
艦内にカガリの声が響く。
「あ!!カガリ様。」
「キサカはどこにいるんだ?」
ちょうど、声を聞きつけた艦内の軍人を問い詰めるようにキサカの居場所を聞く。
「え?キサカ一佐はそちらに向かわれたのですが…」
「なんだ?じゃぁすれ違いか?」
まいったなといってカガリはため息をつきながら髪をかきあげた。
「でも、拾ってきたザフトの人はここの医務室で治療うけてますよ?」
「ザフトを?どういうことだ!!」
「え?でも、一佐が、アレックスだといってたので…」
「アレックス!?」
カガリの驚いた声が艦内に響き渡った。
「アスランさんっその体で無茶はダメです!!」
メイリンはベッドから起き上がろうとしているアスランを必死に止める。
そういう自分もけがでうまく体は動かせない。
アスランはそれよりももっと重症のはず…。
「なんで、そこまで無茶するんですか!ここは安全なんでしょう?ならっ」
キサカってひともここで安静にしてろって…!
必死に訴えるが、アスランはそれでも起き上がろうとすることをやめない…。
「AAにいって、確めないと…」
「でもAAは…。」
つぶやくような声で、でも必死な声で言うアスランに、メイリンは言葉を濁す。
「いや、ここに来たなら、AAもこの基地にいるはずだ…そこでフリーダムのことも・・」
「フリーダム?え?フリーダムは討たれたんじゃ…」
「キラは死んでない!!」
アスランは怒鳴るように叫ぶ。
「…っ」
それが傷に響いたのかベッドに倒れこむ。「だいじょうぶですか?」とメイリンは心配そうに話しかける。
大丈夫ではもちろん無いが、どうしても確めなくてはならなかった。
AAと、フリーダム、キラの無事を…・
必死になって扉のほうに向かう。
そのとき目の前の扉が開いた。
メイリンはキサカが帰ってきたのかと思い、扉の方に目をやった。
しかし入ってきたのは金色の色彩。
「そうだ…キラは死んで無いとも」
凄みを利かせてカガリは言った。
「カガリ!」
「オーブの!!」
アスランとメイリンは入ってきたカガリに向かって同時に叫んだ。
叫ばれたカガリは、メイリンに一瞥した後アスランに向き合う。
「元気そうだな…アスラン…。けがはもういいのか?」
「あっ、あぁ。」
アスランは一人では立ち上がれず床に座り込みそうになっている自分をどう見たらそうみえるのか聞きたかったが、上から見下してみているカガリの視線を受けると何もいえなくなった。
今までも強いまなざしに見つめられたことはあったが今回はそれとは違う感じを受ける。
さらに口元をゆがませて笑っているカガリなんて見たことがなかった。
その顔に馬鹿にされたような印象を受けたが、今はそれどころではない。
「カガリっキラは!?無事だというのは…」
「本当だ」
カガリはアスランの質問に被さるように答える。
「それで?それ以外には聞くことは無いか?」
「・・・・っ……あぁ」
アスランはカガリが落ち着いているのに違和感を覚える。
いつものカガリなら「心配したぞ!」とか何とか言って怒鳴ってきそうなものなのにそれがなく予想外に大人しい。
「カガリ…何かあったのか?」
他に何かあるのではないかと窺うように尋ねる。
「何か…とは?」
やはりきついまなざしは変わらない。
口調もややきつめにかんじる。
「いや、カガリがいつもと違うようだから…気になって…。」
「・・・。」
その言葉にカガリは瞬間目を瞠り、今まではずすことなくにらむかのように見ていたアスランから顔を逸らし、クシャリと髪をかき上げ、そのまま黙り込む。
誰が話すとも無い気まずい沈黙の後、はぁ〜と長めのため息がカガリの口からこぼれた。
「特に何も無い…あるとしたらお前の怪我が結構大変だって事と、キラの怪我はそんなにひどく無くてもう完治しそうだということだ。」
「…本当か?」
「本当だ。」
そんなこと嘘ついてどうすると、疑わしげに見ているアスランに答える。
「よかった…。」
自分のほうが傷は深いのに、キラが無事だということが分かっただけでどうでもよくなったらしい。
ホッとしているアスランの顔を見てカガリは先ほどと打って変わって笑いをこらえるのに必死になる。
「さっきからお前なんて顔してるんだ?ったくそんな顔してるから怒る気もうせるじゃないか。もっと怒鳴って詰ってやろうと思ったのに。」
「カガリ…」
いったいどんな顔をしているのか分からないが大体予想は付く。
2年前の相打ちの時よりは少しまともな顔というぐらいだろう。
「まぁいい。後からキラにしっかりしかってもらうからな。」
びしりとカガリがアスラン顔の前に指をさす。
カガリは会話についていけていないメイリンに向き直ると、事務的なことを2・3聞いて「私が保護するから心配しなくていい。」といかにも首長らしい言葉をかける。
それからアスランのほうにも向き合うとすまないというような顔をして
「すまないが、この艦は移動しなくちゃならないんだ。つらいとは思うがAAの方に移ってくれ。」
あとから、医師たちが運びに来ると思うからそれまでゆっくりしててくれ。
そういって医務室から出て行こうとしが、扉に手をかけたところで、ふと思い出したかのようにアスランに振り向かって慰めなのかなんなのかわからない言葉を投げて今度こそ本当に出て行った。
「あ〜そうだアスラン。この場にラクスがいなくて、初めに来たのが私でよかったな。」
「結局怒りにきたのか、何しに来たのか分からないですね。」
呆然と事の成り行きを見ていたメイリンがつぶやいた。
「あぁ」
金色の台風は「キラに怒られろ」と嫌な予言を残して出て行ったことだけはたしかだ。
その後にあの女帝…。
いきなり傷が痛み出したかのようにアスランは肩に手を当てた。
痛いのは肩ではなくて頭のほうの傷かもしれなかったが、この際どちらもあまり変わらない。
とりあえず医師がが来るまで休んでいることに決めた。
「アスラン…生きてる?」
ベッドのカーテンがゆっくりと開けられる。
開けた相手は待ち望んでいた人。
アスランは伏せていた目を開けて、その人のほうを見上げる。
「キラこそ…生きてて、良かった…。」
心のそこからそう思う。
自分の目で見て本当に安堵できた。
しかし相手から向けられたものは期待した笑顔や泣き顔ではなく冷たい言葉だった。
「まぁ、君よりも強いから?怪我も少ないしね。」
「キラ…?」
心なしか目つきも鋭い。
あぁこうしてるとカガリににてる。と場違いなことを漠然と思っていたら気づかれたのか、目つきよりも鋭い言葉が送られた。
「ザフトに行ったと思ったらまた脱走?君ってほんと成長して無い。」
静かにしかし確かな力をもって告げられた言葉にアスランは苦笑いしか浮かべられなかった。
「・・・・そんな顔でしか返せないようなことはしないでよ。」
「すまない。」
「遅いよ。」
「ほんとにな。」
やり取りの最中も絶えず苦笑いを浮かべているアスランにキラはだんだんむかついてきた。
「・・・・カガリが泣いてた。あの時ホントに僕じゃどうしようも無いくらい泣いてた。」
「・・・あぁ」
「僕に出来るのはほんの少しで、全然ダメで。」
「うん」
「なのに君は勝手にカガリのこと怒るし、僕のことは良いけどさ。」
「すまない」
あの時自分が言った彼らを傷つける言葉を思い出すと、吐き気がしそうだった。
「謝ってもどうも変わらないじゃないか。」
アスランは少し考えるように首を傾けた。
許されるための言葉。
そんな言葉を吐いた自分をそれでも許してほしいと言うわがままな願い。
「…自己満足かな?」
「最低だよそれ。」
はぁとキラは一息つく。
こんなんじゃ足りない。
もっともっと言いたいことはあるのに。
うまく喋れてない。
腹立たしい。
こんな僕も。
苦笑いのアスランも。
「カガリに会った時に、「私じゃうまく叱れないからキラからしっかり叱っといてくれ」って頼まれたんだ」
「・・・・嫌な姉弟だな。」
眉をしかめてつぶやく。
「だから色々考えて、たんだ、けど…。」
「…けど?」
「・・・・・結局、君が、生きてるの・・みてたら、どうで、もよく・・なって。」
立っていたキラは力が抜けたように床に座り込む。
アスランに掛かっていたブランケットの端の方を握り締めると髪で顔を隠すかのようにうつむいた。
「キラ…。」
アスランは強く握っている手に重なるように手を置いてやさしく名前を呼ぶ。
肩が震えている彼を慰めるように。
安心させるように。
すると少し涙声の返事が返ってきた。
「・・・・その呼び方ずるいよ。」
「うん。」
「”うん”じゃなくて!」
思い切り顔をあげると目の前にアスランの顔があった。
驚いて目を瞠るとあまりにもきれいに微笑まれて、涙を吸われると次いで口を塞がれた。
「っ!!」
「ごちそうさま。」
先程と同じ笑みで見つめられる。
結局僕が慰め物みたいになってるじゃないか!!
絶対にそれだけはならない!と思ってキラは怒鳴る。
「アスラン!!僕は叱りに来たの!、なんなのその態度!もっとしおらしくしたらどうなの!!」
「…キラが生きてるって確信が欲しかったんだ。」
「言い訳!」
アスランがしおらしく言うがキラはそれを一刀両断する。
「厳しいな。」
「顔が笑ってたら反省の色が感じられないよアスラン!」
それでもアスランの表情が変わるわけもなく、キラは少し敗北感を味わった。
「カガリのこと守るって言ったくせに」
「…う、ん。」
「僕は撃たせないでって言ったのに。結局僕に撃たせて。負けて。」
「・・・・キラ…そこはいいよ。」
「カガリのウェディングドレス姿見逃したでしょ。可愛かったんだよ?もうちょっと可愛く出来たと思うんだけどね僕は。」
「…。」
「まぁ。どれもこれもぜ・ん・ぶ君のせいだからねアスラン。」
「わかってるよ。」
ため息をつくように返事をする。
それに気をよくしたキラが笑う。
「これに懲りたらもうしないでよね?」
「仰せのままに。」
とても微妙なのは承知の上なんですが、(設定が特にね)終わりです。
続けても、意味無いよね?
アスキラ仲直りできたらそれでよくて。
アスキラ書けたらそれでよくて。
後先考えずに書くと終わりが微妙になるのはやめてほしいですよねごめんなさい。
がんばります(毎回言ってるような気がする)
2005.11.12 SSSより移動、改稿
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