「1/2~a half~」



「アスラン…つらいなら泣きなよ」
アスランの目には頑なに耐える涙が浮かぶ。

カガリと別れてから、彼は時々こうなる。
『カガリに申し訳ない。支えきれなかった』
カガリに対して、罪悪感たっぷりのまっすぐすぎる君に僕は茶化すように言う。

「僕が君の恋人ならきっとうまくいっただろうにね。」


君が北を向いたら僕は南を向いて、君から目を離したりしないのに。
微かに震える君の吐息すら簡単に届く位置にいるのに。
その場所を誰にも渡したりしないのに。


「そうだろうな。」

僕の冗談のような本音に彼も苦笑いしながら答える。
場違いだとでも思っただろうか?

「ごめんね…冗談なんて今言うことじゃないよね。」
「うん・・・でもキラの元気づけようとしてくれたのは分かったから。」
ありがとうとアスランは微かに笑って僕の髪をなでる。
その手にすりより、その心地よさに目を瞑る。

カガリと別れても、僕たちは結局幼馴染のままで、僕は彼の体ごと癒すことは出来ない。
ただの幼馴染。

でも、その関係にはきつくつなぐ糸や約束はいらない。

必要なのは幼いころからあると錯覚するような磁力。

その磁力今でもあるんだろうか。
どこまで行けばそれはなくならないのか試してみたいけど…。
でも、耐え切れなくなるのはきっと僕のほうだ。
結局離れることなんて、考えつかない。


「愛してる」
言葉にしたら君は近くなるんだろうか。
半身のように成れるんだろうか。


「泣いたら次は元気だしてよ。」
「あぁ。」

彼は頑なに流さなかった涙を声も出さずに流す。
まぶたをきつく瞑ってとてもつらそうだ。

僕なら閉じたまぶたのその中にある曇った瞳を彩る光を集めるのに。

僕なら…。

ぼくなら…。

アスランの顔に両手を添えて涙をそっと唇で掬う。

「・・キ…ラ・・・?」

うつむいていたアスランは驚いたように顔を上げキラを見た。
キラは必死に弁解する。
「ごっごめん!!うわっ、なんか流れで!びっくりしたよね?ごめんねアスランっっ。」
「あ・・・いや。」
「ほんとごめんっ!!ぼ、僕部屋に戻るからっ!アスラン、あんまり思いつめないでねっ!?」
「…あっキ、キラっ!」
アスランは呼び止めるが、キラはあわてて部屋を出て行った。


間違えたっ!!
キラは口元に手をやりながら足早に自分の部屋に向かう。

どうしよう!どうしよう!
戻れなくなったらどうしよう!!

口元の手にぬれた感触にもキラは気づかない。




欠けた心の壁、塞ぐ番もない。
何をどうしたら間違いを直せるのだろう。
どうしたら穴を消せるのだろうか・・・。

バンッと勢いよくドアを開けるとすぐさま鍵を閉める。
アスランは、来ないとは思う、だけど。
閉じたドアに背を預けるとキラは力なくしゃがみこんだ。

「手、ぬれてる…。」

キラはやっとぬれた感触に気づいた。

「僕・・・泣いてっ・・・」

気づいたとたん、涙がとめどなくあふれる。

「ふっ・・アスラ・・・ン・・・。」

「大好き…あいしてる…」


もういっそ言ってしまえばいいのだろうか
そうすれば心は軽くなるだろうか…。

でも、元には戻れない。
でも、アスランは気づいたかもしれない。

「気が付いてっ・・・・」
ほしいと願う自分がいる。
でも、君との関係がねじれるぐらいなら・・・・。

捨ててほしい。

君が僕を要らないのなら。
都合の良い親友が必要ならば…。

捨ててほしい。





天野月子第二弾「1/2~a half~」
ちょっと書いてて訳が分からなくなりながらも。
キラが、アスランすきなのアスランにばれたかと思ったけど、きっとアスランは気づいてないよって話。(違)


いつも意味が分からないとか書いてますが、書いてる本人が分からないのに見てくださっている方は分かるんでしょうか?不安です。
ジコマンも程がアル…。

2006.6.18  SSより移動・改稿