「友達になってもらえませんか?」

「え?」



気がついて





「どういうことだ?」
「どういうことって?」

アスランはキラに問い詰める。
キラは食後のアイスを食べながら雑誌を見ていてその目線をアスランに移すそぶりも無い。

アスランはいつものようにヤマト家で晩御飯をもらい、またいつものように食後はキラの部屋でまったりと過ごしていた。
幼馴染の二人のいつもの習慣。
いつもと違うのは、キラが学校で告白されたことだけ・・・。

「だから、学校でのこと。」
「うん・・・?」

絶対聞いてない・・・。

アスランは眉をしかめた。
さっきから鸚鵡返しか、適当な生返事しか帰ってこない。

お前は告白されたって自覚があるのかっ!?

アスランはいらっとして思わず声を荒げる。
「学校で、告白されて手紙まで渡されてただろうが!!」
「っ!!もう!そんなに怒鳴らなくてもきいてるよ!」
「じゃぁちゃんと答えろ。」

大きいな声に驚いたキラが非難を浴びせるがアスランはそれどころではない。

「手紙、なんて書いてあったんだ・・・・。」
「手紙・・・?」
「?」

キラは宙を見ててがみ、てがみとつぶやく。

「あぁ!!まだ読んでない!!」

思い出したように―実際思い出したのだが―キラは鞄を探り手紙を出す。
「え〜。今週の日曜日映画に行きましょう。駅前10時に。待っています。」
相手はがさつなのか封筒には入っておらず、メモ用紙のようなものにかいてある。
一応読み終わるとキラは「だって。」とアスランにそのメモを渡した。

読んでないってなんだ?
というか告白されてなんでお前はそんなあっさりしてるんだ!?
そしてなんで俺にメモを渡すっ!!

「それで、行くのか?」
叫びたい衝動をこらえアスランは聞いた。
「ん?行くよ。だって待ってますってあるじゃん。」
「…・・・・意味、わかってるか?」
「意味?映画見に行くだけでしょ。」
キラはアイスを食べきりゴミをゴミ箱に投げ捨てる。

アスランは力が抜けた。
この幼馴染は今の状況が分かっていないのだ。
友達になってくれと言われた言葉を額面通りに受け取っている。
「行く」という行動が相手に気を持たせる行為になるとは露ほどにも思っていない。

「行くなよ。」
「なんで?行くよ。失礼じゃん。」
「…。だから。」
「もう!うるさいなぁ。アスラン早く家にかえりなよ!」

人が本を読んでいるのに話しかけてくるアスランが面倒でキラは叫ぶ。

「そう…。」
「アスラン?」
いきなり低くなった声にさすがに言い過ぎたかと思ったキラは伺うようにアスランを見たが、アスランは目を合わせずそのまま部屋を出て行った。
「もう。なんなんだよ…。」




「ホントにいくのか…。」
うんざりしたようにアスランは言う。
「行くよ。」
わざわざ玄関で待っていて言うせりふがそれなのかとキラは思った。
「それだけ言いに・・っわっ!!」
突然腕を引っ張られる。
目の前にアスランの顔があった。
その真剣なまなざしに思わず息を呑む。

「行くなよ。すっぽかすより期待持たせるほうが悪いんじゃないのか?」
「期待?どういう…。」
「こういう・・・。」
腕をそのままひっぱってアスランはキラ抱きしめた。
「やめっ!!!」
突然のことにキラはアスランを突き放す。

心臓がうるさい・・!

「友達はそんなことしないよ!!」
キラは少ししかめた顔をして叫ぶと逃げるように走った。
「くそっ。」
悪態をつくとアスランはキラを追いかける。もちろんきづかれないように・・・。





「楽しかった?」
映画を見終わったあとお茶でもしようと相手が言うのでキラは素直に従い、目の前にあったコーヒーショップに入っていた。
始めは気まずいような沈黙があり、それに耐え切れなくなった相手が窺うように聞いてきた。
相手に問われてキラは少し詰まった。

実は全然興味がなくてすこしうとうとしていたなんていえない・・・・・。

「ん〜。そこそこ。」
「・・・そっか。」
あからさまに相手は落ち込んでいる。
「君はおもしろかった?」
「え?あ、うん。見たかったやつだったし。」
「なら良かった。」
もしキラのためにあの映画を選んだというのなら申し訳なかった。
安心したようにキラは笑うと、相手は「今度はキラちゃんのみたいの行こうか。」とやさしく言った。
映画の後にはゲームセンターに行った。
どこに行きたい?ととわれたのでそこになったのだ。

「あたれぇ!!」

キラが叫んで銃をぶっ放す。
ががががががと盛大な効果音が鳴り響き、キラは高得点をたたき出した。
「キラちゃんゲームうまいんだね。」
「あ、おもしろくなかった・・?」
自分ばかり楽しんで相手は楽しくなかったのかもしれない。
それに思い当たってキラは相手を見た。
「いや、おもしろかったよ!」
キラが不安そうに言うので慌てて答えた。
お互いがちょっと不安なのが少しおもしろくて二人は笑いあった。





「やっぱり。いいなぁ」


「何が?」
帰り道相手が突然言うのでキラは相手を振り返った。
「キラちゃん。俺と付き合ってよ。」
「・・・友達じゃなくて?」
「・・・うん。もっと特別な。」
そういって相手が近づいてくる。
朝、アスランとしたやり取りのようだ。
でも違う。

嫌だ。

ドンと相手を押して距離をとる。
相手が驚いたようにキラを見ていた。

「ごめん…。ごめんな・さ・・。」

はっきりといわなくてはいけないのにだんだんと声は小さくなる。それでもキラはせめて目をあわせて言った。
その目が潤んでいるのにも気づかない。
ただ相手がぼやけた先で苦しそうにしている。

「ごめんね。それは…。」
「・・・・そっか、うん。俺もごめんね。今日はありがとう。」
「っ!」

相手は無理やり笑顔を作って帰っていく。
キラはそんな顔をさせた自分になきそうになる。
アスランの言った通りだった。
軽々しくあんな行動を取ったから相手にあんなさみしい顔をさせてしまったのだ。
「ふぇ・・・。」
その場にしゃがみこんでキラはとうとう泣き出してしまった。


馬鹿だ私。
アスランの言ったとおりだったに。
なのに全然気づかなくて・・・。
自分がそういうことになるなんてちっとも思いもしなかったんだ。
なのに・・・あんな顔・・・。


「泣くなよ…。」


いつのまにか隣にいたアスラン。
正直驚いたがその存在にほっとする自分がいた。
さらに涙が止まらなくなってしまった。

「僕があんな・・顔・・させたんだ。」
キラは顔も上げずに呟く。
泣き止む気配の無いのが分かったのかアスランはキラの頭をゆっくりとなでた。

俺じゃないやつを思って泣くなよ。

とはいえなかった。
それでも早く泣き止んでほしくてアスランはことさらやさしく言った。

「チョコとバニラどっちがいい?」
「・・・。」
「アイスかってやるからさ。もう泣くなよ…。」

「・・・チョコ。」

やっとボソリとキラが言ってアスランはほっとしたようにため息をついた。
どうやらやっと泣き止んだようだ。
「じゃ、行こう。」
そういってしゃがんだキラに手を差し伸べる。
キラもその手を取る。

いつかは誰かがアスランの手をこんな風に取るんだろうか。

特別に思う誰かが。
そう思うとキラはまた泣きそうになった。






キラメキ☆銀河町商店街のダブルパロでした〜。
新刊みた瞬間来た!とおもってかつて無い速さで書いてます。
ミケとクロは本当にかわいいです。



2008/1/12 sssより移行・改稿