「ファーストキス」 「んっ…」 自分の鼻に付く声が聞こえる。 とてもいたたまれない。 「はっ…んっ」 自分の息継ぎの声。 まるで自分の物じゃないみたいで。 なにも考えられなくなる。 アスランとのキスはいつもこんなのだ。 立っていることもままならなくなって、アスランに体ごと預ける。 そうするとアスランも僕を支えてくれて、少し一つになったような錯覚を覚える。 「はぁっ」 「ごちそうさま」 キスが終わるといつものようにアスランが笑った。 キラはアスランにすがったままだ。 まだうつろの目をアスランに向けながらキラはつぶやく。 「…割と長いよね」 「?何が?」 「キスが。」 アスランはきょとんとするとやや考え込む。 「そうかな?」 「そうじゃない?」 キラも同じように考え込む。 「キスの長さなんていちいち考えて無いけど…。」 「計ってもないしね。どうだったかなぁ。」 アスランにとってはくだらないことだが、キラが真剣に考え始めている手前話をすり替えるのはいい手ではない。 「ファーストキスの時と比べてみたら?」 「ファーストキス…?」 とはいってもいつのことだったかうろ覚えだ。 幼いころから戯れの一種としてやっていたこともあるし。 それを「初めて」と言うのなら一秒にも満たないだろう。 「それっていつのこと?」 「…俺も言った後気づいた。」 キラが真剣にアスランに聞きなおすと、アスランはため息をつきながら答えた。 「とりあえず、付き合い始めてから…じゃどうかな?」 「あの盛大な告白劇の時にしたやつ?」 「…キラ。」 何とも言いようが無い言い方で自分の告白を表現しないでほしい。 「あれは割りと長かったよね?」 「初めて舌入れたし。」 「っ!!そんなことはどうでもいいの!!」 あられもないアスランの言葉にキラは思わず顔を赤らめる。 「ところでキラ?今までのキスと比べてどうしたかったの?」 「ん?というか長いほうじゃないかなぁと思ったから。」 「それは何と比べて?」 「…他の人と?」 「じゃ、キラは他の人にキスの長さ聞くの?」 盲点だった。 キラは目からうろこが落ちるかのように見開くと顔を真っ赤にさせてうつむいた。 そっか、そうだよね。そういうことだよね。 額を乗せているアスランの肩が揺れる。 笑われてる〜!! さらに真っ赤に顔が染まる。 いたたまれなくなってうつむいたままでいると、アスランの両手がキラの頬にきて顔を上げさせた。 「とりあえず、他人なんか気にしないでさ。気持ち良いなら良いんじゃないか?」 「…そういうもん?」 「そういうものだろ」 「んっ」 キラが目を閉じる前に見たのは意地悪が成功した子供のように笑うアスランだった。 割と長めのキスがやってくる。 |