「アスランはもうお決めになられました?」
突然家にやってきたピンクの妖精(世間から見て)は主語の無い台詞を吐いた。
「・・・・なんのことでしょうか?」
家に来るなりあたりまのように「アールグレイアイスティで」と言われて用意した紅茶を差し出しながらアスランは尋ねる。
「お分かりになられないなら結構ですわ。」
「は?」
「それよりも今日もキラはこちらで夜お食事をとられるのでしょうか?」
ラクスは首をかしげながら尋ねた。先ほどアスランの質問を一刀両断したときとは打って変わってかわいらしく。
戦後キラとアスランはなるべく一緒に食事を取るようにしていた。
一緒に住んでいるわけではないのだが、あまりにも不規則に食べたり食べなかったりするキラを見かねてアスランが提案したのだ。
「連絡も特に無いですから、そのつもりだとは思いますが。」
あまりにも唐突に話題を変えられてアスランはラクスの真意を量りかねたが、とりあえず質問に答える。
「では伝言をお願いしますわ。」
「え?」
「キラ・カガリ誕生日三日前」
「三日後の朝お迎えにあがります」
「だってさキラ」
「了解。」
キラは食事を口に運びながら返した。
「いったい何があるんだ?」
アスランは身を乗り出しぎみに向かいに座っているキラに聞く。
「ん〜分からないなら気にしないでいいよ。」
キラは変わらず食べながらアスランのほうを見もせず返事をする。
「でも気になる。」
それでもアスランは重ねて聞いた。
しょうがないなぁとキラはやっと食事の手を止めてアスランを見る。
「ラクスとカガリと一緒に出かけるんだ。」
「えぇ?」
聞いて無いぞ?とアスランは驚く。
「そりゃね今日決まったから。ラクスの時間が合わなくて、やっと日にちが決まったってわけ。」
「俺も一緒に行く!」
どこのガキだ!と突っ込みたくなったが、キラはアスランを抑えよう努めて冷静に声をだす。
「残念だけど今回はラクスの招待だから、ラクスがいいって言わないと…。」
それにもう選考から外れたみたいだし君。と心の中で続ける。
「じゃぁ聞いてくるから!!」
と食事もそこそこにアスランは家に戻っていった。きっと家のパソコンからラクスに連絡をとるのだろう。
その姿が簡単に想像がついてキラはため息をついた。
「もう無理だと思うんだけどなぁ〜」
部屋にやけに響いた声はかけられた本人に届くことは無かった。
「二日前」
「アスラン…君、朝からうざいんだけど。」
案の定ラクスからいい返事をもらえなかったアスランは朝っぱらからいじけていた。
「空気悪くなるからやめてくれる?というかいい加減仕事いきなよ。」
カガリまってるよ〜。と適当に言いながらいつものように食器を片付けているとアスランがぼそぼそ何か言い出す。
「え?なに?聞こえない。」
「・・・・・」
「え〜?」
水の音にさえぎられ聞き取りにくい。
アスランは眉間にしわを寄せながらキラに向かって叫ぶ。
「〜っキラは俺とカガリどっちが大事なんだと聞いてるんだ!!」
キラはアスランの叫びに目を見開くと困ったようにわらう。
「カガリが今大変なのは分かってるだろう?どっちが大事とか、次元の違うものを比べるなんて出来ないよ。」
「・・・・」
「何が不満なの?」
「別に」
いかにも不満そうな顔をしていたから聞いてみたら返ってくる返事はこんなのだ。
「まぁ別にないならいいけどね。それよりも君、早く仕事にいきなよ。いつまでウチにいるつもりなの?」
ほらほら、とまだソファーに座っていたアスランを立ち上がらせると背中を押して家から追い出す。
「えっ?ちょっ、キラ!」
アスランは突然の事態に驚くが、キラはにっこりと笑ってアスランの仕事道具を渡すと「いってらっしゃい」とにっこり笑ってそのままドアを閉めた。
外に放り出されたアスランは「はぁ」とため息をつきながら仕事場にいくしかなかった。
「遅いぞアスラン!!」
執務室に入るとカガリが朝からありえないスピードで書類を処理していた。
戦後のオーブ復興はまだまだ始まったばかりでカガリはせわしなく毎日を過ごしている。
アスランはそれをキラの頼みということもあるが、ただオーブで何ませずにすごすことも出来ずに秘書兼ボディーガードとしてカガリを補佐している。
「あぁすまない。」
さすがにこれを見ると少し遅れたのが申し訳なくなってくる。
「まぁ、いい。キラからも連絡があったしな。」
「え?」
思いがけない言葉にアスランの意識は浮上した。
キラが…。
「それよりも、私はあさって何があっても休みを取るからそのつもりで今日、明日と仕事をしてくれ。」
「あさって?あぁ…カガリもか。」
そういえばカガリとも一緒に行くなんてことをキラがいっていたような気がする。
俺だけか…。
「なんだ?」
アスランの落ち込み気味の声にカガリは手を止めてアスランのほうに目をやる。
「いや、キラが言ってたから。」
「あぁ、ラクスの招待だからな。アスランも来るんだろう?」
「いや、ラクスに聞いてみたら・・・・」
「ダメだったのか?」
「あぁ。」
アスランはため息ともつかない返事をした。
昨日のやり取りを思い出してやりきれない。
「ですからなぜ俺だけはずされてるんですか?キラも行くのに納得がいかない!!」
「あら?まだお決めになられていないあなたが来ても困るのですわアスラン。」
「ですから何を決めてないというんですか?」
「それが分からないのなら結構。といいましたでしょう?」
「ラクス!」
「お分かりになられましたらご連絡くださいな。でも…チャンスは一度ですわよ?」
アスランはにっこり笑うピンクの妖精の背後に黒いオーラを見た。
「というわけなんだ。」
なにがなんだかさっぱり分からないと肩を落とす。
「あ〜…それはしょうがないかもなぁ。」
まぁまだ時間もチャンスもあるんだから頑張れ!!とカガリは落とされたアスランの肩をバシバシ叩く。
「カガリは何かわからないか?」
「ん〜。これだろうと予想はつくけど・・・・」
「本当か!?」
アスランは肩と一緒に落としていた顔を思い切り上げる。
「い、いやでも・・」
無理なんだよな…と渋っていると。
「何でもいいんだ!!教えてくれ!!」
カガリは思いっきり肩をつかまれる。
あまりにも必死なアスランの形相にこれ以上可哀そうなことはいえなかったがそれでは自分の命に係わる。
なんと言っても―。
「あ〜でも・・・・」
「でも?」
「ラクスに口止めされてるんだ。」
アスランは今にも崩れて砂になりそうだった。
とてつもなくアスランがへたれで…。
そんなつもりは今も当時もなかったのですが、アレ?
↓以下はSSSに載せてたコメント
え〜と今更ながら書ききれて無いところをフォローしてみようかと。
・キラとアスランはオーブにいます。
・アスランはカガリについて仕事してます。キラもたまに手伝います。
・はざま編のように今にも死にそうなキラではありません。
ぐらいか…なんかいろいろ矛盾がありそうですがぼちぼち・・
2005.11.4 キラカガ誕生日に載せたSSSから移動改稿。
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