「恋10」 新年のパーティーということでよく知らない大きな会場でよく知らない大勢の人がざわめきあっている。 これがなければもっと早くアスランと会えたかもしれないのに。 あぁでもアスランもいそがしいよね。 キラはばれないようにため息をつく。 それにしても・・・。 キラは自分の格好を見ながらウンザリした。 やけに背中が開いていて腰のラインを強調するようなオフホワイトのドレスだ。 髪も難しそうに結い上げられている。 動きにくいほど仕立て上げられたキラの隣には同じような格好をした双子の姉がこっちを見て笑っている。 「キラ、それほんとに良く似合ってるな。」 「・・・。」 きっと、いや、疑いようもなく本心なのだろうがキラにとっては褒め言葉でもなんでもない。 嫌味だ。 「いつ、帰れるの?」 機嫌が悪いのを隠しもせずキラは尋ねた。 「あぁ、まぁ一通り挨拶したらな。」 カガリは機嫌が悪いキラに苦笑いしながら答えた。 「僕全然関係ないじゃん。」 この集まりは各業界のトップが集まるようなパーティーだ。 キラにとっては異世界でしかない。 「そうはいってもお前に会いたいって御仁が居るんだからしょうがないだろ?腹をくくってくれよ。」 会いたい?僕に? なんで!? 「初めてきいたよ!誰なのそれ!?」 何の目的があるのが知らないが自分は一介のプログラマーに過ぎない。 なんだって・・。 「キラがお世話になってる人だ…。」 カガリがその人物を思い浮かべたのか憮然と呟いた。 「お世話に・・って・・。」 どの人だろうかと思い浮かべていると声をかけられてキラは振り向いた。 「そのしかめ面をやめんか。」 パトリックにそういわれてアスランはさらに眉をひそめた。 「で、これに出たら明日から向こうに戻っていいんでしたよね。」 いつものこととはいえほとんど知らないひとばかりの集まりに出来れば、出たくない。 出たくもないパーティーに出る代わりにそのほかのことは放り投げて戻って良いと許可を再度確認した。 これがなかったらもっとキラとゆっくり出来るのに!! アスランは軽くこぶしを握りしめた。 「あぁ構わん。今回は紹介したい子におとなしく挨拶できたら好きにしろ。」 「なんなんです?その女性は。」 パトリックが気に入ってる女性が想像できない。 「有能で可愛い子だな。年齢はお前と・・・おなじだ。」 「別に結婚しろとかじゃないならおとなしく挨拶ぐらいできますよ。」 無駄に上げたスキルのうちの一つ”愛想笑”ならレベル100の自信がある。 「結婚までいってくれても構わん。」 「俺、彼女いますから。」 どれだけ気に入ってるのか知らないがそこまで押し付けるのは親といえども人権の侵害じゃなかろうか。 アスランはパトリックの言葉をきっぱりと切り捨てた。 「まぁお前には惜しいがな。」 「・・・・。」 だったらさっさと帰らせろ! アスランは顔を引きつらせてにらんだ。 「おおおったおった。」 嬉しそうにいうパトリックの声が気持ち悪いがアスランは軽く腕を振る先に視線をうつした。 「キラちゃん。」 「え?」 「パトリッ・・・・え!?」 アスランはパトリックの呼んだ名前と移した視線の先にいる人物を見て驚いた。 キラは呼ばれて振り向いた先にお世話になっている人を見つけて微笑もうとした瞬間目に入った隣の人物を見て固まった。 「アスラン?」 「なんでここに!?」 アスランはきれいに着飾られたキラを確認するように眺めた。 キラもアスランのタキシード姿を呆然と見つめる。 「キラ、だよね?」 「う、うん。」 お互い突然の状況に思考がついていかない。 「なんだ、アスランはキラちゃんを知っておったのか。」 「はぁまぁ。」 ここで恋人だというととんでもないことになりそうなので言葉を濁した。 「・・・え〜と、パトリックおじさま?状況がちょっと。」 キラはアスランを知っているパトリックのほうが気になった。 どういうつながりなのか。 「これは私の倅だ。」 倅って・・・。むすこ・・? あれ? 「え?・・えっとでも、おじさま、ザラって言うファミリーネームでしたか?」 「おぉ、ファミリーネームまでは言ってなかったか?」 「はい。ザフトに関係者ってぐらいで・・・・。」 大学の研究室に居るときにふらりと立ち寄った男性に仕事を依頼されて、それから定期的に仕事を依頼された。 それはイザークたちがザフトに入ってからはイザークたちを通してになったが。 初対面で「パトリックおじさんでいいから」と言われてファミリーネームなど聞いたことがなかった。 「それはすまなかった。」 「いえ、僕が迂闊だったんですし。」 教授がおじさまの保障してくれたからってきいてもないなんて・・・。 恥ずかしすぎる! 「それよりキラちゃんはこの馬鹿息子とどういう知り合いなんだ?」 「馬・・って!息子にむかって」 「なんだ?別によかろう。」 馬鹿息子呼ばわりされたアスランは口を噤む。 「隣人、なんです。」 「隣・・・。」 「隣人!?」 恋人とアスランの親であるパトリックには言いにくくキラは当たり障りのない言葉で答えた。 しかし、食いついてきたのはパトリックではなくカガリだった。 「キラ!!隣人って言うとあれか!?、あいつがあれなのか、なぁキラ!そうなのか!?」 キラの肩をつかむと揺す振りながらカガリは早口に尋ねた。 「カ、カガリ、落ちついて・・・。」 僕が濁して”隣人”って言った意味全然ないよ! 「これが落ち着いていられるか!!だって、ラクスが、隣人って言ったら!」 「ほら、もうこんなとこでそんな大きな声出さないで、ね?」 「答えになってないぞキラ!」 「カガリ・・・・。」 キラは思わず頭を抱えた。 「あれとはなんだ?」 「さぁ?」 カガリとキラを見ていたパトリックがアスランに問いかける。 アスランはしれっと分からないと答えた。 しかし、ここで目立つのもアレだな。 「父上紹介したいというのはキラでよかったのでしょうか?」 「あぁ。」 「それではもういいですね?」 「構わん。」 許可をもらってからのアスランの行動は迅速だった。 「失礼。」 そういってカガリをキラから放すとキラの手を取りエスコートしながら扉に向かう。 「あ、アスラン人が見てるし!」 「大丈夫このまま部屋をでるよ。」 足早に部屋を出ようとする。 「まて、お前!!キラをどこに連れて行くつもりだ!!」 カガリが叫ぶがアスランは振り向きもしない。 キラが振り向きかけたがアスランに阻まれてそのまま部屋を出て行った。 「くそ!!あいつやっぱり!!あれだったんだな!!」 カガリはドレスを握り締めた。 一方・・。 「キラちゃんに”お父さん”と呼ばれるののもいいか。」 パトリックは二人が出て行った扉を見ながら呟いた。 「キラどうしてここに?」 とりあえず会場のホテルの部屋を取ってアスランはキラを案内した。 「カガリがどうしてもって。パトリックおじさまと会わせたかったみたいだったんだけど・・。」 「父上に?何でまた。」 「パトリックおじさまが会いたいって言ってたみたいで。」 会いたいって、父上はどうやってキラと・・・・。 「何処で知り合ったんだ?」 「大学の研究室にいたときから仕事をくれてたの。フリーになってからもまめに仕事くれて。」 「へ〜。」 おもしろくない。 アスランは低く小さく呟いた。 なんとなく機嫌を損なったのがわかったのかキラは身を竦める。 まぁキラには関係ないことだな。 さすがに申し訳なくなったアスランが話題を変えた。 「そういえばキラ、隣に居たのは誰だったんだ?」 「え、カガリ?」 「カガリ、ってアスハの・・・・?どういう知り合い?」 まったく想像がつかない。 そもそもあんなに性格が違いそうなのになんで一緒に居るのか謎だった。 「えぇと双子の姉なの。」 「え?」 親戚・友達その程度だと思っていたアスランは面食らった。 「ふたご!?」 「う、うん。」 「でも、ヤマトって・・。」 「アスハのお父様の妹がヤマトに嫁ついで、子供が出来なかったから僕が養子に行ったの。」 こともなげに言われたがそれは・・・。 アスランが眉をしかめたのが分かったキラが慌てて付け加えた。 「でもそれは中学生になったころに僕が自分で決めたんだよ。おば様も大好きだったから。」 「そうか。」 無理やりでないことにアスランは息をついた。 「それよりアスラン、ザラ”ってザフトで何してるの?」 キラはパトリック=ザフトであったがザラ=ザフトにならないので不思議に思った。 おじさまって実はそうとう上の人なんじゃ・・・。 「あぁやっぱりしらなかったんだ。」 アスランは笑うとさらりと言った。 「ザフト創立者で取締役。大株主でもあるな。」 「え?」 キラは目を丸くしておどろいた。 それが可愛くてアスランは笑ってしまった。 それでもよくわかっていないのか今度は分かりやすく言ってみた。 「社長ってことだよ。」 「えぇぇぇ!?」 「キラがアスハだったっていうのよりは驚くことじゃないとおもうけど?」 「え、でも、でも。」 おろおろしているキラももちろん可愛いが、正直こんなところで会えるとは思っていなかった上にこんなにきれいな格好していて正直理性が試されているとしか思えない。 知りたいことも知れたし、そろそろ・・・。 「それよりもキラ。その格好きれいだね。」 「え、あ、うん。ありがと。」 そう言うアスランがあまりにもきれいに笑うのでキラは恥ずかしくて俯いた。 あ。 アップにしているせいかうなじが見えてアスランは思わず口付けた。 「ひゃ!!」 キラは首に手を当てながらアスランを見る。 その顔は真っ赤だ。 な、なんで突然!? 「あ、あすらん?」 「可愛い。それにこんなに背中空いてて、・・・誘ってる?」 直視できない満面の笑みの上に言われた言葉でさらにキラは混乱する。 「あ、あぁあすらん!?」 「キラ。」 名前を呟くとアスランは口を塞いだ。 「んっ・・・。」 深く長く口付けられキラは意識が朦朧としてきた。 つっ・・・と背中をなでられる。 「んっやぁ。」 快感とくすぐったさに背をのけぞらせる。 そのままドレスのファスナーに手を掛けられた。 「ねぇいい?」 キスの合間に尋ねられてキラは答えることが出来ない。 その間にも着々と脱がされている。 それでもなんとか答えたくてキラはアスランの胸元をつかんでいた手をはずして腕を首に回した。 当然口付けは深くなる。 それに気を良くしたのかアスランは一度放すと額に軽くキスを落とす。 「キラ。愛してる。」 そう囁かれてキラも小さく「僕も」と答えた。 バカップルに少し匂わせてみましたがいかがでしょうか? 甘いだけでよかったですか・・・?(汗) しかし物語内時間は8から一週間ぐらいだと思うと書きすぎな感が否めません。 2008.3.20 |