恋12 ―WD― 自分の鍵に似たでも確実に違う鍵。 手のひらに乗せられてキラは思わずアスランを見上げた。 アスランは笑うだけだ。 それも嬉しそうに。 うわ・・・・。 いまだに慣れないアスランの笑顔にキラは思わず俯く。 その照れたキラの姿にアスランもまた照れているということは下を向いているキラは知らない。 「ありがとう。うれしい。」 恥ずかしいのかキラはぼそぼそと呟く。 「おいしいね。ここ。」 キラはニコニコしながら目の前の料理を頬張った。 アスランもそれをにこやかに見ている。 ホワイトデーに二人はアスランのお薦めの店でディナーをしている。 バレンタインにお互いがプレゼントを渡しあったのだからホワイトデーなどないと思っていたキラだが、アスランはちゃっかり用意していた。 意外とアスランってこういうイベントに乗っかるよね・・・。 女としてどうかと思う感想だが、キラの思っていた以上にアスランは細かかった。キラはほとんどの場合気にしない。 その結果アスランの計画通りになったのだが、さすがにキラも今回は引かなかった。 「僕だってもらったんだから今回のお代金は割り勘だよ!」 「いや・・・。」 「絶対にダメだから。」 「・・・・わかった。」 アスランもしぶしぶ了承した。 怒ってる顔も可愛いと思ったのが敗因かもしれない。 食事をしながらアスランはワイングラスをキラに向ける。 「ちょっと飲んでみる?」 「・・・僕弱いし。」 ワインを勧められてキラは渋った。 周りに―特にカガリに―お前は弱いから絶対に飲むなといわれているため手をつけたのは数える程度だ。 それも少し舐める程度。 あのアルコールのにおいが駄目だったのもある。 酔ってしまうか気持ちが悪くなってしまうかあまりにもお酒の経験がないため検討がつかない。 けれどどちらにしろアスランに迷惑をかけるのは間違いない。 どうなるか分からない、しかも悪くなる可能性もあるものに手を出すのはためらわれた。 「甘いから飲みやすいと思うよ?」 「う〜ん。」 「一口ぐらい試してみたら?」 そこまで勧められてキラもこれ以上無下に断れず舐めるように飲んでみた。 「おいしい。」 「良かった。」 嬉しそうに顔を綻ばせるキラにアスランも喜ぶ。 意外といける口なのかも。 そう思ってキラはワインを飲み干した。 それが不味かったのかもしれない。 「ごめん、アスラン・・・。」 酔うのではなく気持ちの悪くなるほうだったキラは帰りのタクシーの中でアスランに寄りかかる。 もしかしたら大丈夫かもしれないという希望は自分の気持ちの悪さにあっさりと覆された。 自己嫌悪も混じってさらに眩暈がした。 「大丈夫・・・?」 アスランはキラの背中をなでる。 「うん、大分楽になった・・・かも。」 「もう家に着くからちょっと頑張って。」 「うん・・・。」 そうは言ってもつらいキラはすこしでもつらさを和らげるために目を閉じた。 「あ。」 目を開けると自分の部屋の天井に良く似た天井。 しかし匂いが違った。 アスランの家だ・・・。 気づいてキラはほっと息をつく。 いつのまに寝てしまったのかアスランのベッドに寝かされていた。 どれぐらい時間たったんだろ。 ムクリと起き上がる。 気持ち悪さも頭痛もない。 あの気持ち悪さはあまり飲んだこともないのにたくさん飲んだための一時的なものだったのだろう。 「あぁキラ起きた?」 キラが起きたのが分かったのかアスランが部屋に入ってくる。 「もうなんともないか?気持ち悪いとか。」 そういいながらベッドに座る。 「うん、もう平気。なんか一時的だったみたい。」 「それは良かった。」 「ごめんね?ベッド占領しちゃって。」 「それはかまわいけど?・・・・朝までここで一緒でもね。」 「〜っ!」 アスランは割りと平気でこういうことを言ってくるのでいつもキラはあたふたする。 慌てているのが自分ばかりな気もしないがそこは場数が違うのではないかと思っている。 「あ、アスランお金!」 場数で思い出した。今日のディナー。 「あぁあれはいいよバレンタインのお返し。」 「それは僕だって一緒だよ。あとタクシー代とか。」 「あれもいいよ。俺のおごり。」 「でも!」 さすがに払わせすぎな感がいなめない。 ちょっと申し訳ない。 心苦しい―・・・そういう顔をしているキラをみてアスランは苦笑いする。 いつも、もっともっと自分に甘えて欲しいのに相手はなかなか甘えきってくれない。 今回は俺のせいでもあるし・・・。 もともとディナーを払うつもりだったアスランは絶対に引かないと予想されるキラを酔わせてうやむやにしようと思ったのだ。 そのため好みは辛口だがあえて甘口のワインを選んだ。 「じゃあキラ俺からのお願い聞いてくれる?」 「なに?」 めったにお願い―ものによるが―をしないアスランが”お願い”と前置きしてくるのだ聞かないわけには行かない。 「受け取って欲しい物があるんだ。」 そういって差し出された。 自分の鍵に似たでも確実に違う鍵。 え? キラがそれに戸惑っていると手を取られその手のひらに握らされる。 手のひらに乗せられてキラは思わずアスランを見上げた。 アスランは笑うだけだ。 それも嬉しそうに。 うわ・・・・。 いまだに慣れないアスランの笑顔にキラは思わず俯く。 その照れたキラの姿にアスランもまた照れているということは下を向いているキラはにはわからない。 それが助かったのだということはぜったにに秘密だ。 「ありがとう。うれしい。」 恥ずかしいのかキラはぼそぼそと呟く。 その言葉にアスランも安心したように息をつく。 「いつでも部屋に来てくれていいし。キラの好きなようにしてくれ。」 「うん。大事にするね。」 少しなみだ目でキラは笑った。 予想外の展開で大分前にキラの鍵を手に入れたアスランは自分の鍵を渡すきっかけをつかみ損ねていた。 いつでもいいじゃないかと同僚はいうがなんとなくこういうのにも雰囲気とかいるのではないかとアスランは思った。 バレンタインでも良かったような気もするが違う気がして結局ホワイトデーになってしまった。 もっと早く渡せばよかった・・・。 キラがこんなに喜んでくれるなら。 けれどアスランにもちょっと不安があったのだ。 「よかった。」 「え?」 「大丈夫だと思ってたけどちょっと不安だったんだ。」 いらないといわれたら。 そんなわけないのに。 それを聞いてキラは思ったが、アスランも自分のように不安を抱えているのを知って少し笑ってしまった。 「キラ?」 不思議そうに問いかけるアスランにキラは軽く口付けると微笑んだ。 僕だって一緒だよ。そう伝わればいいと思いながら。 「キラ!?」 しかしめったにないキラからのキスにアスランは驚いて声を上げる。 その様がおかしくてキラは声を立てて笑った。 ホワイトデーの方がうまく書けたようなきがします。(所詮五十歩百歩) いかがでしょうか? とりあえず過去自分が書いたような文章とかありそうですが目をつぶっていただければ・・・。 まいど同じような内容でほんとすみませ・・。 甘ったるい話を目指したら同じパター・・。精進します。 2008/3/14拍手 2008/6/19改稿・移動 |