誕生日何処に行きたい?

「海。」

そういわれて、春の海に来ている。


恋13


「風、気持ちいいね!」
車から降りて、防波堤に手を突きながらキラは目を瞑り言った。
「季節がいいから。」
アスランも同じように目を瞑った。

「でも、何でまた海なんだ?」
インドア派のキラからは想像がつかない。
「ん〜。好きなんだなんとなく。泳ぐとかそういうんじゃなくてね。」

見てるだけ。
潮風を感じるだけ。
海のにおいをただ、胸に満たすだけ。

「子供のころ海が近かったんだ。」

今思えばアスハのプライベートビーチだったのかもしれない。
カガリと良く遊んだ。それこそ日が暮れるまで。

「夕方の海がすごくてさ。」
「どんな風に?」
「ん・・・夕日に圧倒される。驚くぐらいきれいで。」

思い出すように眺めるキラがきれいで思わず見とれた。

「昼の海もすきなんだけどね」
「見てみたいな・・・。」
「また来ようね。」

そういって笑う。

「あぁ」
アスランは動揺を押し殺して返事をした。
キラは突っ込んでこないのでばれていない。

絶対に気づいてない・・・。

キラが今後について明確にでも無自覚に言ったということに。
それがどれだけ自分を喜ばすか。


どれだけ自信となるか―・・・。


「夕方の海…キラが言うんだからきれいなんだろうな。」
「僕が言わなくてもきれいだよ。」
視線は海に向けたままで困ったように笑いながらキラが言う。

「それでも、同じ物を見て同じように感じたい。」
「ん?」
「そうやってずっと一緒に、隣にいて欲しいんだ。」

キラははじかれたようにアスランの方を向く。

キラは驚きのまなざしでアスランを見た。
アスランはそんなキラの目をじっと見つめながら意を決して言う。

「結婚してください。」
「・・・・・・」

キラはなかなか答えない。
顔も驚いた表情のままだ。
それもはじめこそ顔を上げていたが、だんだん俯く。

うわぁ・・・。

キラは声を漏らさないように口元に手を当てた。

もしかしたら・・・。
そうなったらいい・・・。
そうなりたい。

そう思っていた相手に求められてのぼせたようにぼうっとする。
嬉しさでキラは目頭がじんと熱くなる。




返事が・・・こない。

さすがに何も言われないことにアスランは不安になった。
だんだん俯いた様がそのまま不安になる。
さっきはキラの一言で勇気が出たのに、すぐさまキラの一挙一動で自信をなくす。

「キラ・・・?」

少し上ずっている自分の声が恥ずかしいがこのままの状態は気まずい。
アスランは答えを促すように名前を呼んだ。

「・・・しい。」
「え?」
「うれ・・しいっ!」

キラは勢いよく抱きつく。
アスランは一瞬呆然とするが、抱きつかれた感触にだんだん実感が湧いて、抱きついたキラの体をしっかりと抱き締め返した。

つまり・・。答えは・・・。

アスランは嬉しさでさらに強く抱き締める。
「ありがとう・・・。」
キラの首に頭を埋めて呟く。
「ん・・・。」
応えるようにキラは背中に回した腕に力をこめた。

しばらくそうしているとキラが小さく笑う。
何事かと思ってアスランが顔を上げると待ち構えていたようにキラの手に包まれた。
そのままキラは背伸びしてアスランの眦に口付ける。

「泣いてた…。」
「・・・・キラだって…。」

そういうとキラがまた笑った。
あえて言わなくても言いと思う。
自分でも泣いたのは正直かなり、・・恥ずかしい。
仕返しのようにアスランもキラの涙の筋を舐めた。

「っ!アスラン!」
あせったキラの声が可愛くて、アスランは声を立てて笑う。
「もう。」
それにすねたのかキラはそっぽを向く。耳の辺りが赤いのは気のせいではないだろう。いつまで経ってもなれないキラが可愛かった。

アスランは少し離れていた体を引き寄せるとこちらを向いたキラに軽く口付けた。

「ねぇキラ、指輪買いに行こうか。」
「え?」
アスランはキラの左手に手を絡ませる。
そこに感じる冷たさ。
「婚約指輪・・・。二人で選びたいと思って、まだ買ってないんだ。」
本当は値段を見て遠慮しそうなキラに内緒で買いたかったけど・・・。

笑いながら・・・でも嬉しそうに笑うのでからかわれてもキラは反論する気は起こらなかった。

「二人のための指輪だもんね・・・。」

前のダイヤモンドの指輪はアスランからキラへのもの。
でも今度は二人が一緒に歩むと決めた指輪。

「その後の指輪も一緒に見ておこう。」
ずっと付けられるシンプルな物。
「それともまず家かな?」

気の早いアスランにキラは笑った。

「それよりもまず親かな?」
「・・・。」
「アスラン?」

苦虫を潰したような顔のアスランにキラは首を傾げる。

「父上が問題だ。」
「パトリックおじさま?」

あんなにいい人の何処に問題があるのか。
キラはさらに首をかしげた。
それともキラの知らない親子関係というものでもあるのかもしれない。
めったに見れないアスランの顔にキラは思わず笑ってしまった。

笑われたアスランは笑い事じゃないんだ!と説明したいが、きっとキラは分かってくれないだろう。
それぐらいあの人のキラに対する態度は違いすぎる。

それにしても・・・今日はキラに笑われてばかりな気がする・・・。

決めようと思っても、いまいち決まってないのがいけないのは分かっているが、ちょっとくやしくてもう一度キスをした。
驚いて目を丸くしたキラが可愛い。

「可愛い。」

思わず心の声がポロリとこぼれた。
何度言われてもなれない言葉にキラは顔を赤らめる。

「・・。恥ずかしい・・・。」
「ん?」
「そういうところ。嬉しいけど・・・。」
「嬉しいならもっと言おうか?」
「〜っ。」

真っ赤になってこっちを見る。

可愛い。
自分だけの―…どうしようもないぐらい愛しい人。
大事すぎてどうすればいいのかわからない。

自分でもどうかと思うが笑みが止まらない。
今自分を知っている友人。―・・イザークあたりに見られるとさぞかし驚かれるだろう。
それぐらい嬉しかった。

「もう!からかってばっかり。」
「キラが可愛いから・・・。」
「また!」

すねるキラが可愛くて声を立てて笑った。












どれだけ砂を吐けばいいのか!!
もうすみません。こんな内容な上遅れて・・・。

ひとまず「恋」これにて終幕です。

何の障害(山も谷も落ちも)ないただただ二人がバカップルな話でしたが、(しかも使い古された王道シチュばかり・・)
なぜか喜んでいただけたようでよかったです。

ハラハラドキドキのないトキメキだけの話をやりたかったものですから、
内容なんてなんもないですが、アスキラってバカップルだ!
と言い切った物にはなったのではないかと。(笑)


少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
プロポーズの言葉はグレラガ・・・。


2008/5/19