「恋3」 終わった…。終わった…。 勝った。勝ったんだ! ここのところ無いくらいてこずらされたプログラムが完成してキラは寝不足の頭で勝ち誇っていた。 期限は今日。 何とか終わってキラは笑いたい気分だった。 あ〜今僕絶対寝不足だ。 妙なテンションの自分を冷静に分析しつつとりあえずベッドに入る。 お昼ごろにニコル君が取りに来るからそれまでねてよ…。 お休み三秒。 どこぞの主人公のようにキラは眠りに落ちていった。 ピピピピピピピピ!! 「何!!?」 どれ位眠っていたのか分からなかったがキラは何かの音で起こされる。 「あ、携帯・・・?」 枕元に置いておいた携帯がけたましくキラを呼んでいた。 着信を見るとニコル・アマルフィとでている。 「…。もしもし、ニコル君?」 今からくるという場合でもニコルは寝ていると思われるキラを気遣って三十分前に連絡をくれる。 ちょっと早すぎるような…。 キラは机の時計をみて時間を確認した。 今は11時。まだ布団に入ってから二時間もたっていない。 キラは怪訝そうに電話をとった。 『すみませんキラさん!寝てましたよね。』 「うん、まぁでも大丈夫だよ。」 電話越しに聞こえるニコルの声は気遣ってはいるがあせった声だった。 「なにかあった?」 『…あの本当に申し訳ないんですが、ちょっと仕事でキラさんのプログラムが取りにいけなくなってしまって。』 「あぁ、そういうこと。僕はいつでもいいけど?」 律儀にニコルは謝りの電話を入れてくれたのだとキラは思ったが、 『・・・本当に本当に申し訳無いんですが、それでもそのプログラムが今日必要で…。』 違った。 「え〜と・・・じゃ、僕が届けに行けばいいのかな?」 『すみません!!お願いします!!受付には通しておくのでお願いします!!』 「営業1課だっけ?」 『はい!』 「じゃぁ…。」 キラは時計を見て時間を計算する。 用意に30分行くのに30分…。 12時には着くかな? 「12時すぎ位に着くと思う。」 『ありがとうございます!!』 電話の向こうでニコルがお辞儀をしているような感じがしてキラは苦笑いをした。 ニコルとの電話を切った後キラはため息をついた。 さて何を着ていくか。 「一応大企業だし、取引先なわけだし。」 ほぼラクスの手によってコーディネイトされたクローゼットを眺める。 「もうスーツでいいや。」 濃紺地の薄いストライプが入った物を手に取った。 いつみてもすごいところだよね。 そこに知り合いが三人…。いや四人…。 見上げても上がみえないと感じるほど高いビル。 多くの人が行き来するどでかい正面玄関。 正直気後れする…。 がそうは言ってられなかった。 さっさと渡して帰ろう。 ため息を一つ着くとキラは正面をむき意を決してビルの中に入って行った。 受付に行くと美人な看板嬢が簡単に通してくれた。 ニコルから話をしておくといっていたからだろう。 不振がられることもなくキラはすこしほっとした。 「10階だったっけ?」 先ほど受付嬢に言われた行き先を思い出す。 エレベーターを探すとそこには人だかりが出来ている。 無事たどり着けるのか不安になる人数だ。 「何階ですか?」 「10階ま・・・で…。」 ようやく自分の番になったか。と一息つくと親切な人が階を聞いてきた。 良かった…。自分で押せるような場所にはいなかったキラは好意に甘えようと尋ねてきた人を向いて階数を言った。 が、そこで思わず目を瞠る。 「ザ、ラさ・・ん。」 「え?」 ボタンを押そうとしてくれた親切な人はひそかな想い人、隣人のアスラン・ザラだった。 「ニコルが…。」 「はい、なんだか忙しいみたいで。」 自然の流れでキラとアスランは並んで立っていた。 これまた自然な流れでキラが会社にきた理由を話した。 それは一緒にエレベーターにいる人間から見て不自然な光景だった。 あぁあれか。 アスランは口元に手を当てて最近のニコルの仕事を思い浮かべた。 ニコルが企画部と組んだやつでちょっと手間取ってるとか言ってたな。 アスランが少し考え込んでいる間、キラは周りの痛いぐらいの視線を感じていた。 や、やっぱり部外者がいるって分かるよね!? だから、こういうところに来るの嫌なんだよ〜!! 本当はアスラン・ザラと話しているためだったがキラがそのことに気づくことはなかった。 「ところでヤマトさん、営業1課の場所わかります?」 「あ、はい。受付の方が教えてくれたので。」 「そうですか。良かった。」 「たしか、エレベーターを出て右でしたよね?」 「左です…。」 あ、え・・・?一言二言意味の無い言葉を紡ぐとキラが顔を赤くして俯く。 その様子をかわいいなとか思いながらアスランは見ていたが、さすがに心配になり、常の自分なら決してしない提案をした。 「なんなら俺が送りますけど?」 「えっ!?でもザラさんもお仕事で忙しいんじゃ。」 「これぐらい、大丈夫ですよ。」 断られると思っていたアスランは駄目押しのように言った。営業用じゃない笑顔を浮かべて。 断ろうと思ったキラはその笑顔に何もいえなくなった。 かろうじて「お願いします」と俯きながら言った。 よし!内心アスランはガッツポーズをした。 「あ、キラさん!!すみません!って…アスラン?」 営業1課まで来るとニコルが迎えてくれた。 始めはにこやかに隣の人物に気づいて目を細めた。 「ニコル君!間に合ったかな?」 「なんだニコルその目は。」 「もちろん大丈夫です!手間をかけさせてすみません。」 ごめんなさいと謝りながらニコルはアスランを軽くにらんで言った。 「アスランあなたなんでここにいるんですか?海外事業部に用があるんじゃないでしたっけ?あそこははもっと上でしょうに。」 「あ、ぼ・・私が!」 「ヤマトさんにエレベーターのところであってね。迷ったらこまるだろう?お客様なのに。」 キラがかばうように言い出すとそれをさらにアスランがかばうように言った。 いつもよりもにこやかなアスランの笑みを胡散臭げに見つめながら恐縮しきっているキラに席を勧めた。 「でも本当にここは大きいよね〜」 出されたお茶を飲みながらキラが関心したようにつぶやく。 無事仕事を渡し終わってほっとしていた。 「そんな会社と個人で仕事してるヤマトさんはすごいんですよ。」 なぜだか隣に座っているアスランがキラの言葉に相槌をうった。 「そんっなことないです!!全部ニコル君とかイザークとかディアッカが立ててくれるからで、ぼっく・・私のちからじゃ!」 「それこそそんなことないとおもいますけど?え〜と、それから気になってたんですがヤマトさん一人称…”僕”ですか?」 「え!あ、は、はい。おかしいですよね。でもなかなか直らなくて直そう直そうとは思ってるんですけど…。」 言葉尻がだんだん沈んでいく。 何とかぼろを出すまいとしていたところをあっけなく指摘されてキラは恥ずかしさのあまり俯いた。 「そうですか?人それぞれだと思いますし、ヤマトさんには”僕”も合ってると俺はおもいますけど。」 「ほ、本当ですか?」 「えぇ、だから俺の前でまで”私”は使わなくてもいいですよ。隣人な訳ですし。」 それこそ気にしないといけないようなところだがアスランは「親しい」ということをことさら強調した。 「よかった。」 アスランに気持ち悪がられなくてという意味でキラは言ったのだがそこまでアスランは読めずただにこりと笑みを返した。 なんなんですかこの空間!! ニコルはキラとアスランの正面に座って二人のやり取りを腹立たしげに見ていた。 というかアスラン!!あなた仕事はどうしたんですか!! 大体キラさんに近づきたがってるのが丸分かりですよ! あぁ、こうなると思ったから絶対に二人を会わせたりしなかったのに!全部ディアッカのせいです! ニコルはここにはいない第三者に恨みをすべてぶつけた。 だから何だって言う展開ですみません。 キラの一人称をねアスランが肯定するっていう。 バレンタインの「お礼」のできごとのつもりだったんですけど 2007/6/17 拍手より移動改稿 |