01 コーヒーにお砂糖を |
02 ベビーピンク |
03 ソファー |
04 香炉 |
05 正しい朝の起こし方 |
06 紅色の頬(R−15) |
07 シルクのシーツ |
08 蜂蜜 |
09 うなじ |
10 この手に抱く |
疲れてる彼にちょっとだけ。 いつもはブラックのコーヒーに砂糖を。 「あぁ、ありがとうキラ。」 画面から目を離さずマグカップを受け取る。 いつもの僕みたいに―。 こういうのって実は感じ悪かったんだ・・・。 やられて気がつく。 「あ。」 一口飲んでアスランは砂糖が入っているのに気づいたのか僕のほうを見る。 「ありがとう。」 「…う、ん。」 本当に今更なのにアスランの笑顔に照れて口篭る。 「キラ・・・。」 「っ・・・だって。」 「可愛い。」 そういってアスランが軽く口付けた。 ちょっと苦いコーヒーの香り。 少し甘い砂糖の味。 絶対にアスランの笑顔分糖度が上がってる・・・。 砂糖のような甘さに酔う―・・・。 |
それはとても薄くて透けそうで透けない。 それがとても―・・・・。 「キラ・・それはどうしたんだ?」 「え?あぁなんかラクスがくれたんだ。スポンサーからもらったらしくて、ラクスは白。僕は見ての通り、ベビーピンク。」 似合う? とかいっていちいち見せびらかさなくていいんだ!! アスランは自分の脈拍が上がるのを感じる。 「俺としてギリギリだ。」 「・・・どういう意味だよ。」 あきれるようにキラが言うと、アスランは思いのほか真剣に見つめてきた。 「押し倒すまでに…。」 「馬鹿だなぁ。」 予想通りの答えでキラは声を立てて笑った。 「で、どうして欲しい?」 「お好きなように?」 あくまで尋ねてはいるが答えは決まっているんだろう。そんな尋ね方のアスランにキラはきれいに笑顔を作って応えた。 その直後に唇は塞がれていて。 ベビーピンク色のシルクのネグリジェが薄くて透けそうで透けない。 それがとても扇情的で―…。 |
座って本を見ているとテレビに飽きたのかキラが腰に抱きついてきた。 大きいほうではあるがあくまでもソファーであるので窮屈だ。 「キラ・・・。」 「んん〜ちょっとだけ。」 ちょっとって…。ないだろ。 「ほら。」 ひざに対面に乗せ、抱きつく格好にして自分はキラの肩に顎を乗せ本を読む。 キラは首に腕を回して頭を押し付けるようにしてくる。 「くすぐったい・・。」 「・・・。」 「キィラぁ。」 文句を言っても無反応のキラをあきれたように呼ぶ。 それでも何も変らない。 むしろ押し付ける具合は強くなっている気がする。 いろんなところが―・・・。 ため息をついて本を閉じる。 それを投げるようにテーブルに置くと仕返しとばかりにキラを抱き締めた。 「誘ってる?」 「ソファーじゃイヤだ。」 じゃベッドならいいのかとか色々突っ込みたいがとりあえず甘えたいのは分かる。 「・・・このままがいいな。」 あぁ我慢決定・・・。 |
フレイからもらったのでキラは部屋のチェストに置いておくことにした。 たまに訪ねてくるフレイがすぐ見えるところにおいておかないと機嫌を損なうかもしれないからだ。 それに、物をキラにくれた後時をおかず訪ねてくることが多い。 油断はできない。 とはいっても小皿のような香炉だ。 邪魔になるものではないが存在感がありすぎるものでもない。 最近売っている三角錐と細長い線香タイプのお香、どちらでも使えるもので、絵柄は桜だった。 「どうしたんだ?」 「フレイから。」 「使うのか?」 「まぁ置いておかないとね。」 自室からリビングに来たアスランが尋ねるとキラが困ったようにいう。 「アスラン苦手でしょ?匂いの強いものとか。」 「まぁ。でもキラが使いたいなら使えばいい。」 「じゃ、今度買いにいこっか。」 苦手な物でも自分で選んだら少しは違うだろうから―・・。 「どんな匂いがいいかなぁ。」 「キラが欲情するようなの。」 「・・・・。」 「冗談だ。」 目が真剣だったとキラは突っ込めなかった。 |
まぶし・・・。 カーテンからもれる光に目を眇める。 身じろぎしたいがうまく動けない。 回された腕のせいだ。 腕・・・。外れなさそう。 いつものことだけどアスランは寝てるのにやけに力が強い気がする。 ため息をつきながら腕をはずそうと試みるがいまいち成功率が高くない。 僕、やることいっぱいあるんだけどなぁ・・・。 できるだけアスランにはゆっくりして欲しいから、朝は起こしたくない。 まぁなかなか起きないんだけど。 「よし!」 小さく意気込むとアスランの腕と格闘を始める。 ―五分後 一向に出れる気配がない。 なんでなんだ!! 朝っぱらから疲れる。 「・・・・もういいか、めんどくさいや。」 あきらめて起こすことを選択した。 なかなか起きないアスランだけれども一つだけ確実に起きる起こし方がある。 できればしたくないんだけど・・・。 アスランに向き合うとなるたけ顔を近づけて囁く。 「アスラン・・起きて?」 そうして口付ける。 永く―・・永く―・・・。 |
「あぁっんっ。」 「いい?」 「アスっ・・・。」 キラの頬が紅色に染まる。 生理的に流れる涙がその上を伝って濡れる。 「いい顔・・。」 耳元で囁くと中にあるアスランを締め付けてくる。 「耳・・やだぁ・・。」 「感じるから?」 指摘するとさらに顔を赤くしてにらんでくる。 そんな顔したって煽るだけだろ・・・。 無意識なキラに意地悪するようにさらに突き上げる。 「やぁっあ。」 こぼれる嬌声にも煽られる。 キラを見ると泣きながらこっちを見ていた。 あぁもうっ。 色づいた頬に伝った涙を舐めながら 完全にその気にさせた苛立ちをぶつけるように性急に唇を塞いだ。 |
「シルクってサテンみたい。」 「・・・・。」 「なんでそんなあきれた顔するの?」 アスランがシルクのシーツをきれいにメイクするのを見ながらキラが呟いた。 「その天然なところがキラの魅力だ。」 「はぁ!?」 力強く肯定されてキラはあきれて突っ込む。 「似てるものではあるが違う物だ。」 「わかってるよ!だから”みたい”っていってるだろ。」 明らかに値段の違う物を”似ている”といえるのにアスランは素直に感心した。 そんなことを言おうものなら”見る目がない”とアスランの生きてきた社会では見られる。 それはアスランの生きてきた中であってはならないことだった。 思ったことをすぐ口にできる・・・。 キラのそこは愛すべきところであり、ねたましいところでもあった。 「キラはそのままでいてくれ・・・。」 「意味わかんないしっ!」 心の底からそう呟くとキラは怒ったように叫んだ。 |
ミルクに蜂蜜。 聞くだけで胸やけがしそうだがそれを作るとキラは嬉しそうに微笑む。 「アスランが作るとやっぱりおいしいね。」 「分量が同じなら一緒だろ。」 「プラスアルファだよね。」 アスランの手が掛かってるだけ。 そういって飲み干す。 「ごちそうさまでした。」 ぺろりと口についた残りを舌で舐める。 その動作がやけにそそった。 まずい・・・。 そう思ってもそれ以降は半ば無意識だった。 キラの舌の代わりに唇に付いたミルクを舐め取る。 「甘い。」 「アスラン!」 真っ赤になったキラが叫ぶ。 そうは言っても無意識なのだからしょうがないと思う。 「でもおいしいな。」 キラの唇に付いた分だけ。 |
「あっつい!!」 そういうとキラは髪を掻き揚げてそこら辺の紙で仰ぐ。 長くはないが短くもないキラの髪の長さは一番うっとおしい。 「伸ばしておけば結べて楽なんじゃないか?」 あついあついと繰り返すキラにアスランはあきれながら言った。 そういうアスランは髪を後ろでくくっている。 いかにも涼しそうだ。 「ずるい・・・。」 「あのなぁ。」 恨めしそうに言われても何も出来ない。 第一キラが悪いとアスランは思う。 「伸ばしてくれっていっても伸ばさないのはキラの方じゃないか。」 髪の長いキラが見たいのだと言ってもキラは少しも耳を貸さなかった。 「だってぇ。」 めんどくさがり屋のキラは手入れが面倒になるとすぐ髪を切ってしまう。 それをアスランがどんなに残念がってるかキラはいまいち理解しきれていない。 むしろアスランを見てよく伸ばせるものだと感心すらするのだ。 「あぁ・・・。」 「なんだ?」 ソファーにだらりと座り込むと隣にいるアスランの姿をふとみて、声を漏らす。 熱くて頭がぼうっとしているのかもしれない。 声を出すのも億劫だ。 「きれぇ・・・。」 そういって無意識にアスランのうなじをなぞった。 「っつ!!」 なぞられた場所に手を当てながらアスランがキラっ!と叫ぶ。 顔が真っ赤だ。 「くすぐったかった?」 その顔が可愛くてクスクスと笑いながら謝る。 謝っているようでそうでないキラの態度にアスランはムッとする。 「くすぐったかったよ。キラ。責任・・どう取ってくれるの?」 「え?」 「誘ってるんだよね?」 「えぇ!?」 「もっと熱くなることしようか?」 「アスッ!」 からかった分だけ仕返しされたキラは泣きながらアスランのいいようにされてしまった。 |
腕の中でキラが眠っている。 泣いたせいか目元が少し赤い。 歯止めが聞かなくなってる気がする・・・・。 体に回している腕に少し力を込めた。 逃げることなどないともちろん分かっているが・・・。 キラの意識がなくなるまで抱き続けても拭えないものがある。 「手に抱いてる感じがしない。」 キラのぬくもりを感じながら呟く。 いつだって自由奔放なキラはどんなにがんじがらめに抱いていてもするりと逃げ出す。 アスランはキラしかいらないがキラはそうじゃない。 何にもとらわれないキラが遠くかんじることが何度かあった。 それが唐突に憎くなることがあった。 絶対に手に入らない物のようで・・・。 「キラ・・・。」 いとおしそうにけれど切なく名前を呼んだ。 眠っていて聞こえていないとしても、何度も呼ぶ。 時折応えるようにキラが身じろぎする。 それに頬を緩ませた。 「愛してる。」 儀式と化した誓いの言葉を呟きアスランは目を閉じる。 ゆだねられた体温と重さに安堵しながら―・・・。 |