シンハピバ
9月1日夏休みが終わって二学期の始業式が始まる日。
んでもって俺の誕生日。
「おめでとうシン!!誕生日よね?」
式が終わった後、教室に着いて一番最初に言ってくれたのがルナマリアだった。
「あぁうん。…ありがとう。」
照れながら答える。
「シンも一つ大人になちゃったのよね…」
ルナマリアは俺をちらりと見てしみじみと言う。
なんなんだその言い草は。
「おーいシン!!いくぞ〜!」
ヨウランとヴィーノが呼ぶ。後ろにはレイもいた。
この後3人が何かしらおごってくれるらしい。
「今行く!!じゃぁなルナ!…あ…ありがとう!!」
「いーえ。あっ、そういえばアスランさんとキラさんから何貰ったの?」
アスランさんとキラさんというのは2つ上の先輩で、アスランさんは部活でのキラさんは中学校からの知り合いだ。
ちなみにアスランさんとキラさんは幼馴染で恋人、キラさんに可愛がられてた(?)おれは中学も違うのにキラさん並にアスランさんにも可愛がられ(?)ていた。
本当に二人とも嫌味なぐらいかわいがってくれている。
嫌味なぐらい…。
「メールすらきてないよ…。」
声のトーンを落としながらつぶやく。
「…あ〜えーとまぁ忙しい二人だし…ね?気にしない気にしない!!じゃいってらっしゃい!」
気まずそうにルナマリアは言った。
その後、ヨウランたちと話していてもさっきの事がやっぱり気になった。
祝ってくれなんて言ってないけど、やっぱり祝って欲しい。
それが理不尽なのは分かっているが。
去年は頼んでも無いのに祝ってくれたくせに今年は受験だからってメールすらないのかよ!
二人とも第一志望は確実とか言ってたくせに!!
「シン?どうした?」
「えっ?あぁごめんレイ。」
会話に入ってこない俺に不振に思ったのかレイが尋ねてくる。
「何かあったのか?」
むしろ無いんですとは言えない。
「なんでもない!!で、なに奢ってくれるわけ?」
ヨウランとヴィーノに向き合って聞く。
今は皆が祝ってくれてるんだから、あの二人のことを考えるのはよそう。
どうせ考えたって無駄なんだから。
「熱つ。」
9月の夜とはいえ、今日はやけに蒸す。
結局夜までみんなといて、結局何も無かった。
いや、三人からはありがたく奢ってもらったんだから、無いとかそういうんじゃないけど…。
「あぁ、くそっ。なんで、俺がこんなにあの人たちのことで悩まなくちゃいけないんだ。」
やけになって足元を蹴る。
「あの人たちって?」
「そんなの決まってる!」
「何を悩んでたんだ?」
「それこそっ…!!」
ん…?ふと気になった。
…俺は誰と話してる?
だれ・・と?
「シン!!ちょっと聞いてるの?」
「シン…?聞いてるのか?」
いっぺんに両耳から問われる。
この声は・・・・
「ええぇぇぇー!?」
俺の声が夜中の住宅街に響いた。
「ちょっとシン!!近所迷惑だから!!」
俺の右側にいる人に口を押さえられる。
「キラ、あっちの公園まで行くぞ。」
左側にいる人に腕を引っ張られて連れて行かれる。
「なんであんたたちがこんなところに!!」
俺は公園に着くまで口を塞がれて満足に呼吸もできなかったけど、勢いに任せて怒鳴る。
メールとか電話とか学校で会うとか家の前で待ち伏せとかじゃなく俺がその道を通るかも分からない道で後ろから来るって
「どういう!!」
訳なんだ!さすがに息が続かなくてぜーはーと呼吸をする。その背中をキラさんがさすってくれた。
「えーと…何から話せばいいかな?」
「簡潔に言うと、キラがいつもどおりの誕生日の祝い方じゃつまらないから。といったからだ。」
「…。」
あえて言葉にすることでも無いと思いますアスランさん。
訝しげな顔でキラさんをみると、あわてたように話す。
「アスラン!!それは簡潔にしすぎ!!つまりね?僕たちが高校で祝ってあげられるのは今年が最後じゃない?だからとびっきり驚かせてあげようと思って。レイとかに聞いてこっそり後をつけてみたんだ。」
…とびっきり驚かせてもらいました。
つか忘れてたんじゃないんですか?
いまだ整わない息を吐きながら心の中で答える。
「…俺に言ったのはそんな可愛い言葉じゃなかったけどな。」
「アスラン!!いらないこといわないで!」
「ん?だって本当のことだろう?毎年祝うだけってのもつまんない…」
「わーわー!!アスランうるさい!!シンちょっと聞かないでよ!」
…あんたら何しに来たんだよ。目の前で夫婦漫才やられたってなんの祝いにもなってないって。
いきなり起こった二人の言い合いを見ながら思う。
「…あの・・もうとびきり驚かせてもらったんですけど…。」
いつまで続くか分からない痴話げんかを聞いてられない。
家で俺が帰るのをマユたちが待ってるだろうし。
「あぁ!!ごめんシン!!一番大事なこと忘れてたよ。アスラン!!」
「はいはい…本当にするのか?」
「当たり前!!」
「…何をデスか・・・」
なんか不安…。
そう思っていたら突然両脇に二人が来て腕をつかまれる。
「ハッピーバースディ!シン!!」
両側からいっせいに叫ばれると、同じタイミングで両頬にキスをされる。
キスを…。
「うわあぁぁぁ!!!」
何してるんですかあんたら!!
「ほらびっくりしたでしょ?アスラン。」
「というか嫌がらせに近いと思うが…。」
そんな淡々と言われても!!
「嬉しくなかった?」
そういう次元じゃなくて!!
なんかいろいろやられすぎて何をどういえばいいのか訳が分からなくなってきた。
「あ〜もう。あんたたち俺の誕生日忘れてたんじゃ無いのかよ…。」
思わずさっきまで思っていたことが口に出る。
「忘れてた?まさか!!わざわざレイと連絡取ってまで計画したのに。」
「なんだ?それともメールも無かったから忘れられてるとか思ってたのか?」
その通りとは言えない…。
「馬鹿だなぁシン。メールよりも会っていったほうがいいに決まってるじゃない!」
「だから、わざわざ学校でも会わないように気を配ったんだぞ?」
…それっていらないことじゃないんですか。
はぁとため息をついた俺をキラさんが見咎めるように怒る。
もちろん本気じゃない。
俺が適当にあしらうとキラさんがさらに怒ってアスランさんが止めに入る。
それからさらにため息をついてやる。
俺に悩ませた罰ですよ〜と思いながら。
「ところで物は無いんですか?」
「ん?アレだけじゃ足りないの?」
「いや、だから、物ですよ物。」
「いやだな〜シンって。世の中物より思い出!!」
どこのキャッチフレーズですか…。
「シン…実はキラはな…。」
「え?」
内緒話でもするようにアスランはシンの耳元に近づく。
「アスラン!!ちょっと言わないでよ!!」
「シンの誕生日を一昨日思い出して財布の中を見てみたらありえないくらい残ってなかったんだ…。」
「ばーかー!!何言ってんの君!!」
「…。」
あ〜それでこういう訳なんですか…。
横目でちらりとキラさんを見やる。
「でも、祝いたい気持ちは一緒だからね!」
目が合うと一生懸命言われた。
やっぱり嬉しいのかも…。
「はいはい。」
口には出してやらないけど、絶対顔は笑ってるんじゃ無いかと思う。
目の前にいる二人がこっち向いて笑ってるから。
9月1日が誕生日だと知った日から書きまして思いのほか長くなりました。
長くなりすぎました(泣)
シンは書きやすいというか、これがシンでいいのか?みたいな所はあります。
でもアスキラです。シンはキラが好きでした。
200511.12 SSSよりいどう、改稿
プラウザをとじてお戻りください。
|