「はじめて見たあの人は眩暈がしそうなほど美人だった」(シン・キラ出会い編シン目線)




はじめてみたあの人は眩暈がしそうなほど美人だった。


「迷った…。」
入学式が終わって帰ろうとしたら桜の群生が目に入ってふらふらと見ていると、思った以上に歩いていたのか今自分がどこにいるのか分からなくなった。
「てかここ、広すぎ。」
公立中学校くせに無駄に敷地がある。
田舎だからだろうか。
「どうしよう…」
来た方向と思われるほうに歩いていたのだが一向に元の場所に戻れない。
「校舎すら見えないって、どういうことだよ」
マンモス校とまではいかないがそれなりの人数がいる学校の校舎はそれなりの大きさだ。
けれど、まず見えないとは思ってもみなかった。
というか迷うなんて思っても見なかった。
「つか桜ありすぎて方向感覚狂う…。」
自分よりもかなり大きい桜が前をさえぎるかのように咲いている。
それがいま自分が置かれている現状の最大の原因だった。
「今日中に帰れるかな?」
ふと自分で漏らした嫌な想像に顔をしかめるが、立ち止まっていても埒が明かないのでとりあえず歩く。

「マジで迷った。」
先ほどから迷ってはいたのだが、心の中で完全には肯定していなかった。
来たと思われる方向に進んでさえいればどこか、目印になるものや人に会えると思ったからだ。
しかしそれは完全に見当はずれで、入学式が終わった後ほど人はいない時間ははないだろう。
「うーわーどうし…」
ようと続けようとしたが、何かやわらかい物を踏んだ感触がして足元を見る。

桜に埋もれた死体があった。

「うっわぁぁっっ〜!!」
し、死体!?何でこんなところに!!え、ちょっと待ってけ、警察?
でも、それだと俺だって疑われないか!?え、え〜!!!??

どうしよう!!どうしよう!!でも死体にしては肌色もいいし…。
あ、生きてんのこの人?
と、とりあえず生死の確認!

「マジで生きてんのかなこの人。」
踏まれても起きなかったため不思議に思って鼻に手をやって息をしているか確める。
手にかかる息の感触からどうやら生きているようだ。
「この制服は…この学校のだよな。年上?」
制服から想像して年上だが、体格が華奢なので確かなことはいえない。
ど〜しようか。
しかしこの死体(もどき)美人だなぁ。
ついさっきまで自分のことでいっぱいいっぱいだったのに、いきなり死体もどきを見つけてプチパニックになった。
とりあえず生きていることにホッとしていたせいか、シンはその死体もどきが目を開けたことに気づかなかった。

「君誰?」

「わっ!!」
いきなり声をかけられて驚く。
死体かと思われていた人が目を開けてこっちを見ていて思わず開かれて交わる紫の目にシンは息を呑む。

この人マジで美人…。

「ちょっと、聞いてる?」
じっと見られてか、いささか不機嫌そうに尋ねられてあわてる。
「あっ!!す、すみません!!俺…迷子でっ」
怪しい者じゃないないんです。と自分が新入生であることを必死で説明する。

「…くっ。あははは。」

笑われた。シンは恥ずかしくて顔を赤くする。

なんで、笑われるわけ!?

しばらく笑われ続けたが、さすがにいたたまれなくなってきた。
「あ、あの…。」
「あぁ、ごめん、ごめん。で、迷子って君ここどこだか本当に分からないの?」
「はぁ」
だからこうして迷ってるわけだが。
「上ばっかり見てたんじゃ無いの?」
「木の隙間から周りを見ようとしてたんですが…。」
なにぶん多くて無理でした。
しょんぼりと肩を落としてシンは言う。
「…え〜まぁそんなに気を落とさないで。新入生は迷いやすいらしいから。」
僕も初め迷ったしね。とさりげなくフォローされる。
「じゃぁ行こうか。」
「え?」
いきなり立ち上がったかと思うと目の前に手を差し伸べられる。
戸惑って呆然と見ていると、相手は不思議そうに首を傾ける。
「迷ったんでしょ?僕もそろそろ帰るから一緒に帰ろう?」
それはありがたいのだが・・・
「あの・・手…。」
さすがに中学生にまでなって手をつないでかえるのはちょっと…。
相手も気づいたのか手を引っ込める。
「あっあぁそうか。恥ずかしい?ごめん僕の感覚で…いつも手をつないで帰ってるから…。」
誰とですか…。
とは聞けないが気になった。
「じゃ行こうかシン・アスカ君。」
「え?何で俺の名前。」
いきなり呼ばれて驚く。自己紹介した覚えなんて無い。
しかし相手はきょとんとして言う。
「さっき言ってたじゃない。一年三組シン・アスカって。自分が何言ったか覚えてないの?」
それはパニックになっていたのでちょっと記憶に無かった。
「すみません…」
「いや、まぁ謝ることじゃないよ。」
ちょっとおもしろいけど。と笑いをこらえながら言われた。
さっきから笑われっぱなしだ。

それからなんとか俺は桜の迷路から抜け出した。
出てみればそんなに桜の数も多くなかったのだが、満開に咲いていた桜とその花びらを舞い上がらせた風によって迷っていたみたいだ。
まぁ、同じところをぐるぐる回っていたわけじゃない。絶対に。


桜の下で出会っためまいをするような美人な人は実は家が俺と同じ方向でそのまま一緒に帰った。
手はつないでない。
たわいもないお互いのことを話しながら帰る。
家族のこととか。
幼馴染のこととか。
桜のところで何で寝てたとか。
そんなこんなであっという間に家に着いた。
相手よりも俺の家のほうが学校よりにある。


「じゃ、またねシン君」
「シンで良いですよ・・・え〜と」
今更ながらに相手の名前を聞いてないことに気が付いた。

「三年一組キラ・ヤマト。また明日。」
そういってにっこり笑わうと手を振りながら帰っていった。

「また明日。キラさん」
聞こえないだろうが言ってみる。
明日は聞こえるように言ってみよう。








はじめてみたあの人は眩暈がしそうなほど美人だった(←題名:笑)
散々ネタを没にして書いたのがこれ。
結局意味不明ですが、とりあえずお決まりの出会い編でございます。
次はキラ目線…。
みじか〜く済まそうかと思います。
SSのはずなのに結構ここに書いてある話って長いですよね…。
20063.31改稿

いたたまれない…。