「遊園地」


「絶対に嫌です!!」

シンが声を荒げる。
周りの人が見るが気にせずに嫌だと大声で繰り返した。
逃げ出そうと必死だが両腕をつかまれて動けない。
それでも必死にもがく。
その様子を見てシンの右腕をつかんでいたキラが「はぁ〜」と大きくため息をついた。

「ここまで来たんだからさそれは無いんじゃない?」
「だれもこれに乗るとは言ってません!!」
「も〜。宇宙の無重力が平気なら全然大丈夫じゃない。」
MSだともっとひどいGだって掛かるんだからかるいもんだよ。とあきれたようにキラが言うとシンはきっと目を吊り上げて叫ぶ。

「だってこれ360度、一回転するんですよ!?」

それこそMSでもっと激しく動いてるじゃないかとキラはバカにしたような目で見た。
「あきらめろシン…。」
そこにそれまで傍観していた左腕をつかんだアスランがため息をつくように言った。
「なに言ってるんですか!?絶対に嫌です!!」
あんただって苦手なくせに!!アスランに向かって叫ぶとキラがグイっと引っ張り
「そのアスランだって乗るんだからいいかげんにしてよ」
低い声で囁く。
シンはあまりの恐ろしさに固まってしまった。

なんで、なんで俺がこんな目に…。

事の発端はたまにとれた休暇にキラがテーマパークに行こうと言い出したからだった。
何でかアスランも休みで(きっと無理やり合わせたのだ)それに護衛という形で自分が行くことになった。
始めはシューティングやら、シアター系やらを回っていてそれから当然のように絶叫系のものにも乗ることになった。

で、恐ろしい体験をした。

小さいころは身長が足りず乗れなかったため経験が無かったシンは思い切り悲鳴を上げてしまった。

まさか自分が動かさない物があんなに怖いなんて・・・っ!!

今思い出しても目が回りそうだ。
レールから外れたらどうするんだというくらいのスピードと旋回。
今にも飛び出しそうな急降下そのときの浮遊感。

絶対にもう乗りたくない!!!

シンは俯いて動かない。
キラはもう一度大きくため息をつくとシンにささやく。

「いい加減にしない本気で怒るよ?」

―っ!!
びくりとシンは肩を震わす。

「はい、アスラン一緒に引っ張っていこうね。」
「シン、いくぞ〜。」
そういってアスランとキラはシンをずるずると引っ張っていく。

無理やり乗せられたシンは頭を下げ絶対に前を見ずに死ぬ、死ぬと繰り返していた。
キラは隣で楽しいそうに笑いながらシンに次は右とか今から落ちるよ〜と説明し、アスランはあきらめたように無言で乗っていた。

「たのしかったね〜!!」

本当に楽しそうにキラは言った。
その隣には意識を手放しかけたシンと少しグロッキーになっているアスランが居る。


「あんたなんで乗るんですか…。」
自分ほどではないが絶叫系が苦手なアスラン。
それがなんで。
「キラ一人で乗せられないし乗ってるキラが嬉しそうだからな…。」
困ったように笑うアスランにシンは何もいえなくなった。

あんたの人生ほんとキラさんで出来てるんだな!!!

いっそ羨ましいぐらいだ。

「ほら〜!!次いくよ〜!!」