どうゆうわけだかキラからもらった誕生日プレゼントはプラネタリウムだった。


  プラネタリウム


「これ、今年の誕生日プレゼントね。」

 キラは「ハイ」と割と大き目のプレゼントをアスランの前に置いた。

 キラとアスランは小学校からの幼馴染で大学生の今でもこうやって誕生日プレゼントの交換をしている。
 男同士でどうかと思うが、幼いころからの習慣と、たんに

 自分に都合がいいからだった。


「なんだ?」

 ありがとうもそこそにアスランは箱を持つ。
 持ってみるとそこそこの重さはある。
 振ってみても音はしない。

「ちょっと、精密なものなんだからそんなぶっきらぼうに扱わないで!」

 キラが慌てたように振るのをとめる。

「なんなんだ?」
「家で開けてよね。あ、あとこれオプションね。」
「オプション?」

 適当な紙袋に薄い物が入っている。
 何かの紙のようなものだ。

「じゃ、これから僕バイトだから。」
「あぁありがとう。バイト頑張れ。」
「うん。」

 毎年二人の誕生日はご飯なり食べに行くが今年はどうしてもキラがバイトを休めなかったために後日ご飯を食べに行こうということになってる。
 キラが気まずげに去っていくのをアスランは手を振って見送った。



 キラとアスランは幼馴染だ。
 異常なほど仲がいいと周りに言われても、”ただの”幼馴染だ。
 恋人のように寄り添う権利があるわけではないが、それでも相手の時間を使える幼馴染だ。

 それが時折アスランには苦痛だがそれをキラに告げるつもりなどかけらもなかった。



 家に着くとアスランはキラからもらった誕生日プレゼントを開ける。
 箱は立派だ。
 アルファベットで商品名が書かれている。

「プラネタリウム・・・?」

 壊れないように詰められたクッションをはずして取り出した。
 コンセントを指して暗い部屋でそれをつけると部屋に宇宙が浮かべられ、窓を開けることもなく夜空を手に入れることができる。

「なんでまた。」

 どうせ店で一目ぼれしたキラがちょうどいいとアスランの誕生日プレゼントにしたのだろう。
 そして我が物顔で使うのだ。
 その様が簡単に浮かんできてアスランは笑った。
 どんな物かとさっそくつけてみた。

「うわっ。」

 精巧な宇宙にアスランは思わず声を上げた。
 一瞬のうちに天井も壁もなくなって、宇宙が敷き詰められた。
 広いとはいえない部屋があっという間に無限に広く感じる。

「これは、割と高そうだ。」

 キラにしては奮発したようだ。
 来年のお返しはきっちりとしなくては。

「そういえば。」

 オプションなる物もあった。
 ガサゴソと紙袋をあさる。
 出てきたのはプラスチックでできた星座早見表だった。

「至れりつくせりだな。」

 笑いながら眺める。
 どうせこれを見ながらアスランに星の説明でもさせる気なのだろう。
 どこまでもキラらしくてアスランの笑みは深まる。

 きちんと見て星を覚えて説明できるようにしないとなぁと思っている自分はどうかしてると思うが仕方がない。

 あぁでもちょっとくらい細工をしてもきっとキラは気づくまい。
 そうおもってアスランはプラネタリウムをとめ、明るくした部屋で分解し始めた。
 そうして星座を作っている基を取り出すと錐で小さくけれど他の星よりは大きくて、でもばれないように穴をあけた。
 元に戻すともう一度つける。

 自分がつけたであろう星を見つけた。

 消えそうなぐらい輝いてて、でも一番まぶしくて。

キラ。

 アスランしか知らない、星の名前だ。

「はずかしいな・・・。」

 自分の乙女思考に苦笑いをする。
 それでも傷つかず傷つけないままで手に入れた星はアスランの想いを和らげる。

「キラ。」

 いとしい星の名前をよんでアスランは手を伸ばす。
 触れられない星に手を伸ばす。

「キラ。」

 もう一度呼んで更に手を伸ばすとヒヤリと壁の感触がし、アスランを正気に戻した。

「馬鹿だ・・・。」

 かなり参っているのが感じられてアスランは自嘲気味に呟いた。
 自分から近づくことはしないくせになんて浅ましい。
 触れることはあきらめているくせに。
 思いつきで開けた穴に。
 思いをこめた名前に。

 手を伸ばすなんて―…。

 この星は本物じゃない。
 この星はキラじゃぁない。
 ただの夢だ。

 届くわけないけど、かといって消えてくれない光だ。







2009/1/12移動