「アスラン!!これすごくない!?」
 キラはアスランの部屋でつけたプラネタリウムに興奮しっぱなしだ。

 後日ご飯ということになったのはいいが、案の定自分が見たいがために買ったプラネタリウムをつけるために外食にはならなかった。
 適当だけれどそこそこ豪華に食べる物を買ってケーキもつけた。
 もちろんそれはキラのためだが。

「自分が買っておいてなんだそれは・・・。」
 キラらしくて苦笑いした。

「自画自賛だよ!僕最高!!」
 テンションが高いままキラが星を眺める。

「ねぇアスランあの星は?」

 わくわく。
 と顔に書いてあるキラがアスランに聞く。

「だろうと思って予習しておきました。」
 そういってキラからもらった早見表を取り出す。
「さっすがぁ!」
「おだてても何もでないぞ。」
「分かってるよ!で、アレは?」
「あれは・・。」

 本当に外で星を見るように二人で肩を寄せ合って一つ一つ星の名前を呼んでいった。

「あれ?」
「ん?」
「あれは何て星?」
「あ〜・・・?」

 最後のほうになると訳が分からなくなって早見表と見比べながら確認していく。
 あれは・・・。

「あんな大きい星見逃すはずないよね?」
 手間取っているとキラがアスランから早見表を取り上げた。

「ないなぁ。」

 真剣に探すキラの声にアスランは眉をしかめる。

 あぁ。しくじった。
 絶対に気にならないと思ったのに。
 絶対に最後まで星の名前を読み上げることにならないと思ったのに。
 まずい。

「ねぇアスラン。」
「あ、あぁ。」
「・・・・どうしたの?」
「何がだ?」

 苦しそうに応えたアスランにキラも眉をしかめる。

「調子悪い?」
「いや、そんなことはないけど。」
「でも苦しそうだよ?」

 キラは窺うようにアスランを見るとアスランは一層眉をひそめた。
 キラも同じように眉をしかめる。
 アスランのこの顔は泣きそうな顔だ。

「どうしたの?」
 何がそんな風にさせるのかキラは少し語気を強めて言った。

 心配そうなキラの顔が目の前にある。



 あぁ。
 まずい。




 ほとんど無意識でアスランはキラの顔に近づく。
 軽く唇が重なると、キラはかたまってしまった。

 なんで今まで・・・。

 近づいては遠ざけて、距離を確めていたのに。
 触れることはとうに諦めていたのに・・。
 すこし背伸びするだけで驚くほど容易く触れてしまった。

 泣きそうだ・・・。

 いままでの自分の我慢を自分で壊してしまった。

「あ、すら・・ん。」
 呆然としたキラにアスランは俯いて苦笑いする。それしかできなかった。

「ごめん。」
「あ、や。だ、大丈夫。じょ、冗談だよね?」
 必死に確認するキラの声がなきそうだ。

 そこまでおびえさせてしまったのか。

「・・・・。あぁ。」

 違うけれどそういうしかない。
 力なく応えて、キラからの反応を待つが一向にない。

「キラ?」

 さすがに無言が気まずくて顔を上げる。
 目の前のキラの顔に目を瞠った。

「・・・え、なんで…・・・?」

 泣いて・・?
 キラは呆然としたまま涙を流していた。
 アスランの声にはっとしてキラは顔を隠すが涙は止まらない。

「ご、ごめんっ。な、でもない。だいじょ、ぶだか・・・。」
「キラ!?」

 言葉にならずとめどなくあふれるキラの涙を思わず掬う。

「大丈夫じゃないだろう!」
「ごめ・・・っん。」

 どう見ても大丈夫じゃないキラの様子にアスランは慌てるがキラの涙は止まる様子を見せない。
 そこまで傷つけたかとおもうと胸が痛い。

「なんで突然・・・。」
「ほんと、気に・・しないで。」
「いや、無理だろ。」

 一番大事なキラが泣いているのに気にするなというほうが無理だ。
 しかし、泣きたいのはこっちのほうだったりもする。

「キラ・・。」

 それでもキラの泣き顔をどうにかしたくて肩を引き寄せて抱き締めた。
 キラは一瞬びくつくが、それでも安心したのか体重を預けてきた。
 ぬくもりに酔いそうになるのを堪えながらアスランは背をなでた。




「ごめんね・・・。」
「落ち着いたか?」

 背中をなで続けていると落ち着いてきたキラが謝る。
 謝るよりも理由が知りたかったが、とりあえず涙が止まったことにホッとした。

「何か気に触ることしたか・・・?」
 堪えられなくてキスしたくせにとも思うがそれ程かと思うと絶望感が襲う。
 尋ねたときにキラがビクリと肩を震わすがなんでもないようにまた体を預けてきた。
「君が悪いんじゃないんだ。」
「・・・言えない事か?」
 キラがここまでかたくなになることはあまりない。


「・・・・。」
「キラ・・・。」

 言いたくないのは分かる。聞きたいのは自分のエゴだ。
 分かっていて促す。
 キラがゆっくり顔を上げる。
 意を決したような目にアスランは射られる。

「キラ?」

 様子が違うとおもって訝しげに呼ぶ。
 キラは眉をひそめ苦しげに息をつくとアスランの襟を引っ張った。
 そのままさっきとは逆にキラの唇がアスランに重なった。

「っ。」
「ごめんっ!!」

 掠め取るだけのキスにキラは謝るとアスランを突き放して逃げる。

「ま、てっ!!」

 いきなりのことに頭は混乱していたがキラが逃げるのだけは阻止しなければならない。
 そして今の行動をはっきりしさせなければ。

 もしかしたら・・・。

「キラっ」

 玄関で捕まえて後ろから羽交い絞めにした。
 キラは苦しそうに身を捩るが知ったことではない。

「ごめんっアスラン。だからはなして!!」
「だめだ。」
「で・・・っも。」

 キラの声は涙混じりになっていた。

「さっきもあれほど泣いたくせに。泣き虫だなぁ。」
 ことさら優しく言うとキラも憎まれ口で応える。
「うるさい。」

 いつもどおりのキラが少し嬉しい。
 アスランはもうどうしようもない、でも暗くはないであろう希望に賭けてキラを一度強く抱き締めると耳元で囁く。

「あの星。」
「え?」
「早見表で見つからなかった星あれ、俺が作ったんだ。」
「えぇ?」

 驚く声にアスランは今から言う言葉の反応が怖くて心臓が早くなるのを自覚する。

「名前、あるんだ。」
「星の?」
「・・そう。」
「…・・なんて?」



「キラ。」



「え?」
「キラって言うんだその星。」

 消えそうなくらい輝いてて、触れようと手を伸ばしても届かない。
 触れられるのは驚くほど冷たい現実。
 でもどうしようもなく夢を見たくて馬鹿だと思いながらつけた名前だ。

「一番・・・大切な名前を、つけたんだ」

 重ねて言うとキラが恐る恐る後ろにいるアスランを見上げる。

「ほんと・・?」
「ほんと。」
「・・ぁすら、ん」
「また泣く」

 そういうとそんなことないといいながら首に腕を回して抱きついてきた。
 苦笑いしたが嬉しさは隠しきれていないと思う。

「嬉しい。」
「俺も。」
「アスラン。」
「キラ。」

 そういって涙を吸い上げると口付けた。







なんとか10月中にあがりました。
遅くなったけど誕生日オメデトウアスラン!!
アスランが主人公の話をと思ったんですが難しい…。

今回はバンプのプラネタリウムがめっちゃアスキラ!と思いながら書きました。
いい歌です。


2008/10/31

少々の付け足しのために読み返してみるととてつもなく恥ずかしい話だと思いました。
自分何をおもってここまで甘くしたのか…。
砂吐きそうになられたらすみません。

2009/1/12移動改稿